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N700系新幹線電車の開発-車体傾斜システムと省エネルギー-

N700系新幹線電車

図1 N700系新幹線電車

車体傾斜システム

図2 車体傾斜システム

1. 概要

 N700 系新幹線電車は,「最速のハイテク車両」「快適性の更なる向上」「環境への適合と更なる省エネルギー化」をコンセプトに開発した新世代の新幹線電車である.

 最大の特徴は新幹線として初めて車体傾斜システムを採用したことである.空気ばね式車体傾斜,デジタル技術を用いた列車制御装置,情報伝送装置など,最新の技術を有機的に組み合わせ,新幹線にふさわしい安全性と安定性を兼備したシステムとして完成した.

 一方,空気抵抗の低減,回生エネルギーの増加,車体傾斜システムの採用によって,大幅な省エネルギー化を実現した.

2. 技術の概要

 新幹線用の車体傾斜システムには,高いレベルの安全性と安定性が求められる.特に東海道新幹線は1 日当たり300 本以上の列車を運行する超過密ダイヤであり,システムダウンすると輸送に大きな影響を及ぼす可能性があるため,非常に高い安定性が要求される.さらに,新幹線には沿線環境の面から,軽量であることも必須の条件である.

 既存の車体傾斜システムとしては,制御付を含む振り子式や油圧式などが採用されているが,前述の新幹線用の車体傾斜システムに求められる条件に鑑みると,いずれも新幹線には適さない.

 そのため,前述の条件を満足する車体傾斜システムを実現するため,①デジタル技術を用いた1 段ブレーキ制御ATC による精度の高い位置情報,②制御伝送システムによる16 両編成400m の各車両への情報伝送,③シンプルで軽量な傾斜システムである空気ばね式車体傾斜システム,の3 つの技術を開発し,これらの成果を有機的に統合して小型・軽量で安全性・安定性が高く,さらには乗心地にも優れたN700 系用の車体傾斜システムとして完成させた.

 この結果,東海道新幹線の標準的な曲線である半径2 500mの曲線では従来は250km/h に落として走行していたが,車体傾斜システムの導入によって直線区間と同じ270km/h での走行が可能となった.また,半径2 500m 以外の曲線についても,傾斜により速度向上を行っている.これらの結果,東京から新大阪までの所要時分が,従来の2 時間30 分から5 分短縮され,2 時間25 分となった.また,半径2 500m の曲線前後における減速・加速がなくなったことにより,乗客が受ける前後方向の加速度および加速度の時間変化率(ジャーク)が低減し,乗心地が格段に向上した.

 省エネルギーについては,走行抵抗の低減,回生ブレーキの拡大,車体傾斜システムの採用が寄与している.

 走行抵抗の低減については,隣接する車両と車両との間のすきま,および台車部がポイントとなる.そこで,前者に対しては全周ホロ,後者に対しては台車カバーを開発して装備した.全周ホロとは,隣接する車体間どうしを隙間なく結び,あたかも車体表面が隣接する車両まで続いているように見えるホロである.構造的には,高い強度を有する特殊繊維に,高分子合成スポンジ体を接着し,金属製の取り付け枠を介して車体に取り付けられている.台車カバーについては,「車外騒音低減」と「検修時の視認性の確保」という基本的に相反する2 つの条件をクリアする形状のものを開発し,全ての台車部に取り付けた.また,この他にも,窓ガラス,ドアなどについても平滑化を進め,走行抵抗の低減に寄与している.

 回生ブレーキとは,ブレーキ時にモータを発電機として使うことによって運動エネルギーを電力に変換し,架線を介して他の列車に供給するものである.700 系では,1 編成16 両あたり12 両で回生していたが,N700 系では14 両に増大し,さらに残り2 両分も含め全16 両分のブレーキ力を負担するようにしており,省エネルギーに繋がっている.

 また,前述の車体傾斜システムの導入によって270km/h の等速走行が可能となり,省エネルギーに寄与している.

 以上より,東京~新大阪間の走行に要するエネルギーについて,初代の新幹線電車である0 系の220km/h 走行を基準として比較すると,N700 系は,270km/h 走行の場合には68%,また,0 系と同じ220km/h 走行の場合には51%となっており,同一条件で考えると初代の新幹線電車に対して約半分のエネルギーでの走行が可能となっている.

3. まとめ

 N700 系新幹線電車は,平成19 年7 月1 日から営業運転を開始している.平成23 年度までに80 編成を投入し,全ての定期「のぞみ」がN700 系になる予定である.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2008年、臼井俊一(東海旅客鉄道(株))、上野雅之(東海旅客鉄道(株))、鳥居昭彦(東海旅客鉄道(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

N700系新幹線電車、車体傾斜システム、空気ばね式車体傾斜、列車制御装置、回生エネルギー、流体・空気力学、安全性・信頼性、鉄道・浮上式鉄道、省エネルギー
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