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水素フリーダイヤモンドライクカーボン膜をコーティングしたエンジン用バルブリフターの開発

エンジンシリンダヘッドの断面写真

図1 エンジンシリンダヘッドの断面写真

Pin/Disk摩擦試験結果

図2 Pin/Disk摩擦試験結果

各種表面処理、オイルでのエンジン動弁フリクション

図3 各種表面処理、オイルでのエンジン動弁フリクション

1. 概要

 自動車の燃費向上の方策として内燃機関の機械損失の低減が有効である.特にエンジン常用域で全体の15~20%もの高い分担比を占める直動型動弁機構のカム/バルブリフター間のフリクション低減は,実用燃費の向上に大きく寄与する.カム/バルブリフター間の潤滑状態は境界~混合潤滑域であるため,真実接触面積を減らすための平滑化や,接点の摩擦係数の低減( =固体潤滑剤の適用) が有効である.そこで著者らは平滑で高硬度,さらに固体潤滑剤相当の効果をもつ,水素を含まないダイヤモンドライクカーボン(以下DLC)膜に着目し,適用開発を行った.その結果,カムとバルブリフター間のフリクションを大幅に低減し,燃費の向上に繋げた.

2. 技術の内容

 図1 にエンジンシリンダヘッドの断面写真と,DLC 膜をコーティングしたバルブリフターを示す.DLC 膜はカムとしゅう動するバルブリフター冠面に成膜される.

 図2 にPin/Disk 単体摩擦試験の結果を示す.DLC 膜に含まれる水素量が少ないほど摩擦係数は低い値を示し,水素フリーDLC 膜(以下a-c 膜)で最も低い.これはエンジン油に含まれる油性剤のa-c 膜への吸着が加速し,摺動部でのメタルコンタクトを抑制しているためと考えられる.評価したエンジン油は油性剤以外の添加剤を多く含む.そこでDLC 膜と油性剤の組合せによる低摩擦化のポテンシャルを調べるために,合成油ポリアルファオレイン(以下PAO)に1wt%の油性剤グリセリンモノオレート(以下GMO)を添加した試作油を用いて評価した(図2 点線).水素量が少ないほど顕著に効果が現れ,最大で4 分の一までフリクションが低減した.

 エンジンでのフリクション低減効果を確認するために,V6エンジンのカム軸駆動トルクの計測を行った.結果を図3 に示す.粗さの効果を分離するため試験後のカム・リフターの合成粗さで整理した.a-c 膜は5W30 との組合せでもっとも低い値を示し,その効果は合成粗さが向上した点と,固体潤滑剤相当の効果の重ね合わせで説明できる.またPAO+GMO との組合せでは,リン酸塩被膜比で約60%のフリクション低減効果を示し,オイルの改良による大きなポテンシャルを示した.

3. まとめ

 本製品はDLC 対応5W30GF4 省燃費エンジン油と共に2006 年秋に発売の新V6 エンジンから車載を開始した.今後水平展開を進めるほか,ピストンリング等の他の摺動部材にもa-c 膜を適用拡大していく予定である.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2007年、馬淵 豊(日産自動車(株))、保田芳輝(日産自動車(株))、和泉博之(日産自動車(株))、小池智之(日産自動車(株))、早坂宏樹(日産自動車(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

フリクション低減、バルブリフター、ダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜)、水素フリーDLC膜、自動車用エンジン、トライボロジー、潤滑、接触・摺動、表面改質、ガソリンエンジン
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