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エジェクタサイクル冷凍機の開発-2段膨張ノズル式エジェクタによる高効率化とCOP+50%の達成-

エジェクタの作動

図1 エジェクタの作動

エジェクタサイクルの構成

図2 エジェクタサイクルの構成

2段膨張エジェクタの構造

図3 2段膨張エジェクタの構造

1.概要

 京都議定書の正式な発効を受けて,いよいよ国際的な地球温暖化抑制対策の早急な実行が期待されており,CO2排出量の大幅な削減のために,機器の省エネルギー化が急務となっている.今回,冷凍空調製品において,大幅な省エネルギー効果が期待できるエジェクタサイクルを世界で初めて開発し,車載用冷凍機に搭載した.従来,エジェクタサイクルは,理論はあったが,実用化された例はなく,机上の空論とされてきた.二相流化すると大幅に効率の落ちるエジェクタを独自の2段膨張式可変ノズル構造とし,二相流数値解析により最適化を行い,5倍の効率に向上させた.システム効率としても,50%の効率向上を達成した.

2.技術の内容

 冷凍空調装置において,膨張弁で損失していたエネルギーをエジェクタによりコンプレッサの動力として回収することで,冷凍サイクルの効率を大幅に向上させるエジェクタサイクルは,従来の膨張弁の代わりにエジェクタを用いるもので,膨張弁で渦として最終的には熱エネルギーとして損失していたエネルギーをエジェクタのノズル部分で運動エネルギーに変換し,混合部・ディフューザ部分で圧力エネルギーに変換し,最終的にコンプレッサの吸入圧力を上昇させる冷媒ポンプの機能を果たすことから,コンプレッサの動力を大幅に低減できるものである.2段膨張ノズルは,一段目のノズルで液滴を微粒化し,二段目のノズルであたかも均質流のように,液滴とガスの速度をほぼ等しくすることで,ノズル出口の速度を上げることができるもので基本特許を取得している.数値解析は,混合部とディフューザ部での液滴とガスの減速度合いや混合状態を解析することで二相流特有の最適形状を導き出すことができる.特にノズルの入口では歩行者の速度だが,ノズル出口では,マッハ2の超音速となり,ディフューザ出口では,車両速度程度まで減速することから,緻密な形状推定が必要であった.数値解析にあたっては,二相流特有のノズルでの沸騰遅れを考慮したスリップ比によりノズル出口の液滴速度とガス速度を求めた.混合部とディフューザの流れは,臨界ウェーバ数から算出した液滴径をもとに,抵抗力,液ガス間に働く運動量とエネルギー保存を一次の風上差分とK-ε高レイノルズ数乱流モデルを用い,SIMPLE法により解いた.また,ボイド率を考慮し,ラグランジェモデルとオイラー方式を比較し,オイラー方式を選定した.上記の独自の数値解析モデルにより二相流の乱流渦損失と壁面の境界層の圧力損失等を考慮することで,液滴の粘性の緩和時間により最適化された混合部・ディフューザ形状を明確にすることができた.非常にたくさんの要因の交互作用をすべて考慮するには膨大な計算時間がかかるため,最適化手法として応答曲面解析により三次元的な最適形状を計算回数の大幅低減により計算する工夫を行った.エジェクタの実用化の課題としては,世界で初めての製品化であったため,製造方法から選定した.特に,独自の可変エジェクタの開発などにより,数ミクロンオーダーの加工精度を必要とするノズルの加工には製造部の技能オリンピックメダリストの技能が生かされた.

 ノズルと混合部の同軸度など各部の精度を高く保つことがシステム性能に大きく影響するため,数値解析により公差を最適設計し,コストミニマム設計を心がけた.

3.まとめ

 以上の技術開発を中心に,冷凍機の効率を定格条件で50%向上し,軽量化40%,冷媒封入量低減70%を達成した.また,車載用冷凍機のライフサイクルコストも約24%低減することができ,ユーザの皆様に好評をいただいている.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2005年、武内裕嗣((株)デンソー)、柚原 博((株)デンソー)、西嶋春幸((株)デンソー)、池本 徹((株)デンソー)、池上 真((株)デンソー)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

エジェクタ、膨脹弁、二相流、COP、数値解析、冷凍・空調、冷媒、省エネルギー、サイクル論
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