1. HOME
  2. 機械関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号1793)

磁気転写技術

磁気転写記録の原理

図1 磁気転写記録の原理

マスターディスクの構成と磁気ディスクの密着方法

図2 マスターディスクの構成と磁気ディスクの密着方法

1.概要

 近年,ハードディスクドライブ(HDD)の記録密度は驚異的な勢いで増加している.これに伴ってサーボトラックライターによる磁気ヘッド位置決め信号(サーボ信号)の記録が技術的,コスト的な課題として顕在化しつつある.上記課題を解決し,高精度かつ低コストのサーボトラック記録技術を提供することを目的に,信号に対応する磁性膜パターンをリソグラフィ技術によって形成したマスターディスクを磁気ディスクに密着させ,外部磁界を印加することにより信号を一括面記録する磁気転写技術を開発・実用化した.

2.技術の内容

 図1に磁気転写記録の原理を示す.マスターディスク上に,磁気ディスクに記録すべき信号パターンに対応した磁性膜パターンがリソグラフィ技術を用いて形成されている.あらかじめ周方向に直流消去した磁気ディスクとマスターディスクとを密着させた状態で,直流消去の向きとは逆極性の外部磁界を印加する.外部磁界が印加された時,一磁気ディスク磁性層と磁性膜パターンとが接触している部位では,磁性膜パターンのシールド効果により直流消去時の磁化が保持される.一方,磁性膜パターンが形成されていない部位では,磁性膜パターン間に漏えいする磁束によって直流消去時の磁化が反転される.以上の過程により,磁性膜パターンに対応した磁化パターンを磁気ディスク全面に瞬時に記録することができる.

 本技術におけるマスター情報は,磁化情報ではなく,磁性膜パターンという「形状」情報であるので,磁気転写記録の過程でいかに大きな外部磁界を印加しても,消失することはない.また,磁性膜パターンの形状は自由に設計できるので,磁気ヘッドを用いては記録し得ない磁化パターンをも自在に記録することが可能である.

 磁気ディスク全面に良好かつ均質に信号を記録するためには,マスターディスクと磁気ディスクという硬質ディスク同士を均一に密着させることが必要である.サーボ信号は,一定問隔で再生される離散的な信号であるので,マスターディスク上の磁性膜パターンもこれに対応して一定角度間隔で形成すればよい.そこで図2に示すように,マスターディスクの磁性膜パターンが形成されていない領域をエッチングして溝を形成し,この溝を通してマスターディスクと磁気ディスクとを吸引密着する手法を採用し,均質な信号記録を実現した.

 またHDDでは,磁気ディスク上わずか十数nmを磁気ヘッドが浮上して記録再生が行われるため,磁気ディスク表面を清浄に保つことが非常に重要である.このため,磁気転写によって磁気ディスク表面の磁性層,保護層,潤滑層が損傷・汚染されないよう,独自の清浄度管理,検査手法を確立し,実用信頼性を確保した.

3.おわりに

 2001年7月,松下寿電子工業(株)において,世界で初めて磁気転写技術を応用したHDDの量産が開始された.本技術は,量産実証された新規技術としてHDD業界に展開されつつあり,今後,PCや民生機器用HDDに求められるさらなる高密度化や低価格化の実現を通して,大いに産業界に貢献するものと期待される.


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2004年、松岡 薫(松下電器産業(株))、東間清和(松下電器産業(株))、橋 秀幸(松下電器産業(株))、浜田泰三(松下電器産業(株))、石田達朗(松下電器産業(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

かしこくやさしい機械(生体・知能・情報)
(情報・知能・精密機器)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

2004
スマトラ沖で地震(M9.0)が発生し、死者・行方不明者数が30万人以上に上る。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

磁気ディスク装置、サーボトラックライター、磁気転写、記憶装置、制御、位置決め機構、半導体製造技術
Page Top