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積層型回折光学素子作製技術の研究とカメラレンズヘの応用

積層型回折光学素子の模式図

図1 積層型回折光学素子の模式図

高精度曲面加工機

図2 高精度曲面加工機

積層型回折光学素子搭載によるレンズの小型化・軽量化

図3 積層型回折光学素子搭載によるレンズの小型化・軽量化

1.概要

 積層型回折光学素子は,これまで不要回折フレアが発生するため,撮像光学素子としての利用はできないとされていた回折光学素子を,2種類の材料で作られた回折格子を積層化するというアイディアで不要回折光を抑制し,可視光全域に渡って理想的な回折効率を実現し,世界で始めて回折光学素子を撮影用レンズに利用できるようにしたものである.

 これを実現するためには,不要回折フレアを除去するための回折格子の積層化というアイディアと設計,また,その設計を具体化する,金型加工装置,金型加工技術,成形技術などのモノ作りの技術との全体調和のもとに初めて製品化を実現することができた.

2.技術の内容

 積層型回折光学素子の概略形状を図1に示す.基材としてのガラスレンズの表面に紫外線硬化型樹脂で形成された回折格子層を持った素子を,それぞれの相対する格子輪帯の位置と間隔をミクロンメータ単位の精度で管理し,位置を合わせて接合することで成り立っている.

 この回折光学素子を成形する金型は,図2に示す高精度自由曲面加工機によって加工を行い,切削表面を研磨加工することなくそのまま光学素子用金型として使用する.この加工機は,光学金型の将来展開も考慮し,形状対応度を高めるために,今回使用した正面旋削加工だけでなく,全軸非接触ダイレクト駆動の5軸同期加工を行うことが可能な構成となっている.また,FEM解析の活用などで,310×170mmの大きな加工エリアを持ちながら,高い加工点動剛性を実現している.加工速度についても経済性を考慮し,光学素子レベルの形状精度,表面粗さを実現しながら,7mm/sの加工速度を実現していることが特徴である.

 この金型の形状を紫外線硬化型樹脂を使いガラスレンズ上に転写成形する.樹脂の硬化反応に対して,厳密な反応の制御と管理を行い,硬化による収縮などをナノメータオーダーで管理することで,金型形状への補正としてのフィードバックを可能としている.

3.おわりに

 この積層型回折光学素子を利用することで,図3に示すように,EF400mm F4のレンズを,屈折レンズのみで設計した時と同等の高画質を実現しつつ,全長で約27%減(317mm→232.7mm),質量で約31%減(3000g→2080g)の小型軽量化を実現することができた(屈折光学素子でのレンズは弊社の想定設計例).


 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2004年、斎藤正道(キャノン(株))、中林正明(キャノン(株))、今成 徹(キャノン(株))、三好裕一(キャノン(株))、横山晃彦(キャノン(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

回折格子、積層化、接合、転写成型、自由曲面加工機、光学機器、超精密加工、射出成形
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