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工作機械の高精度な熱変位補償システム

熱変位補償システム概念図

図1 熱変位補償システム概念図

熱変位補償を搭載した工作機械

図2 熱変位補償を搭載した工作機械

1.概要

 工作機械の高効率化,高精度化の要求に伴い加工寸法変化の要因となる熱変位を最小化する要求が強くなってきている.熱変位の主原因は,大別して機械稼働による内部発熱,環境室温変化,加工熱の三つに分けられ,従来,これらへの対応は人の加工技術に依るところが大きかった.そこで,工作機械自身が自律的に熱変位を補償するシステムを開発した.このシステムは,熱変位量と密接な関係がある温度を主に利用していることから,幅広い工作機械への適用を可能としている.

2.技術の内容

 熱変位補償システムを搭載した立形マシニングセンタの概念図を図1に示す.本システムは,自社製CNC装置にて,工作機械を構成する主要構造内に埋め込んだ専用温度センサからの温度情報と運転情報をもとに,熱変位量を推定演算する.そして,補正量をリアルタイムに該当する軸のサーボ信号に重畳させて熱変位補償を実行する仕組みである.

 工作機械の稼働中は,熱変位が一定の状態(定常状態)であることは少なく,ほとんどが継続的に熱変位している状態(過渡状態)にある.例えば,部品加工に代表される短時間で主軸回転速度が頻繁に変化する場合には,主軸回転に伴う熱変形や切削水温度変化が主な問題になり,金型に代表される長時間の加工では,室温変化による機械全体の熱変形が主な問題になる.そこで,機械を操作するオペレータが,熱変位のない感覚で使えるようにするため,幅広い稼働条件(過渡状態)の中で熱変位量を正確に推定することが開発のポイントになった.

(1)主軸の熱変位推定技術の開発
 内部発熱が原因による熱変位の中で,最も大きな割合を占める主軸熱変位は,主軸の回転速度によって熱変位特性が変化することから,正確な熱変位推定が困難であった.そこで,この特性を主軸の回転速度を用いた実験式で表現し,また連続過渡状態を補償する式を熱変位推定演算式に組み込むことで,あらゆる回転速度での正確な熱変位推定が可能になった.その結果,主軸の回転や停止で熱変位時定数が大きく変化する条件,並びに熱変位の過渡状態が連続する条件で,主軸の熱変位量による変化を5μm以下に抑制することができた.

(2)機械構造の熱変位推定技術の開発
 環境室温変化や加工熱(切削水温度変化)により,機械構造体の温度が変化して熱変形し,加工精度の安定性に影響を及ぼす.また,加工時の切削水の有無により熱伝達関数が変化することから,幅広い稼働条件下で正確な熱変位推定を可能とするために,熱の流れを分析して,適切な構造要素に温度センサを配置する技術を開発した.熱変位補償を適用したマシニングセンタで,環境室温を8°C変化させた条件下で加工を行った結果,寸法変化10μm以下で安定的に加工することができた.

(3) 補償システムの加工面品位への配慮
 昨今の加工技術の進化により加工表面粗さが良くなり,熱変位補償の指令を1μm単位で行うと加工面品位に影響が生じる場合がある.そこで,CNC装置が1μm単位の指令であっても熱変位補償の指令単位を0.1μmとすることで,加工品位が良好で高精度な加工に対応できる熱変位補償システムとした.

3、まとめ

 工作機械の熱変位を幅広い稼働条件下で正確に補償できるシステムを開発した.現在,この熱変位補償システムを複合加工機,旋盤,マシニングセンタ,研削盤と多機種にわたって搭載しており,ユーザの生産効率の向上に寄与すると共に,精度確保のための暖機運転の排除や設置環境条件の緩和による省エネ効果にも寄与している.

 また,本技術は,熱変形姿勢を考慮した機械構造との協調により,いっそうの高精度化が実現できることから,工作機械の新しい設計思想の発想にも大きく貢献することとなった.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2003年、千田治光(オークマ(株))、佐藤礼士(オークマ(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

内部発熱、環境室温変化、加工熱、熱変位量、熱変位推定技術、ふく射、熱伝導、機械加工、工作機械
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