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ガソリンエンジンのゼロエミッション化技術の開発

エミッション規制値と達成レベルの比較

図1 エミッション規制値と達成レベルの比較

4つの新技術

図2 4つの新技術

1.概要

 近年,環境問題への関心が高まっており,全世界的に自動車からの排出ガスの規制を強化する動きがある.われわれは,これらの規制強化の動きに先駆けて自動車の排出ガスのゼロエミッション化を目指し数々のクリーン化技術の開発を進めた.

 2000年2月に北アメリカに投入されたセントラCAは,ガソリン車としては世界で初めてカリフォルニア州大気資源局からZEV(ゼロエミッション車)クレジット取得の認可を得た.日本国内向けには,量販モデルであるブルーバードシルフィに搭載し,国土交通省の低排出ガス車認定制度の中で最もクリーンな超-低排出ガス基準値をさらに50%以上下回る値を初めて達成した、この排気ガスレベルを日本の都市,例えば東京の大気と比較すると,東京の大気中のHC濃度は年平均で2~3ppmであるが,ブルーバードシルフイの排気ガス中のHC濃度は国内10・15モード平均で2ppm以下であり大気よりクリーンであるといえる.

 また,燃費性能は1.8lエンジンとしてはトップレベルの燃費16km/l,CO2排出量147g/kmも達成し,2010年の燃費基準値もクリアしている.図1に国内10・15モードにおけるブルーバードシルフィの排気達成レベルを示す.

2.主要技術の紹介

 燃焼改善によりエンジンで生成されるエミッションを低減.触媒の早期活性化およびエンジン始動直後のHCを一時的にトラップし触媒活性後に脱離させることにより冷機時からのエミッションを大幅に低減.また,空燃比を高精度に制御し触媒の転化効率を極限近くに高めることにより暖機後におけるエミッションを低減した.これらよりテールパイプから排出されるエミッションを大気レベル以下にすることを実現した.本排気システムを図2に示す.

・ゼロエミッションを具現化する四つのキー技術

(1)高速噴流型ハイスワール燃焼→エンジンから出るエミッションの低減
 インテークマニホールドに一体型で組込まれているスワールコントロールバルブのバルブにより開口部を1/5に絞り,シリンダ内吸入流速を高めエンジン始動直後の燃焼安定性を向上させている.このハイスワール燃焼によりエンジン出口の排気を大幅に低減させている.さらに種々の運転条件下で最適なスワール強度にバルブを制御することで,燃焼の安定化およびEGR率のアップを行い燃費向上も実現している.

(2)超低ヒートマス担体触媒→触媒の早期活性化
 マニホールド直下に設定した触媒には,貴金属等のコーティング改良に加え触媒担体の壁の厚さを従来にない2ミル(約50μm)という薄さまで薄肉化することでヒートマス低減を図り,活性時間を従来の20~30秒から10秒程度に短縮させることができた.

(3)2ステージ式高効率HCトラップ触媒システム→触媒活性化前のHC低減
 HCトラップ触媒システムは,低温で触媒が活性できない温度領域で放出されてしまったHCを吸着材に一時的にトラップし,表層の三元触媒が活性化する温度に達してからトラップしたHCを脱離し浄化する画期的なシステムである.さらにHCトラップ触媒を2段に設定し前段の触媒で未浄化のHCを再度後段でトラップし浄化することでトラップしたHCの浄化処理率を大幅に向上させることができた.

(4)高精度空燃比制御システム→触媒転化率の改善
 触媒の浄化性能を最大限に発揮するには,触媒前の空燃比を常に理論混合比近傍に保つことが必要不可欠となる.マニホールド触媒前に空燃比センサを床下にO2センサを設定し高精度に最適に空燃比を制御している.従来では90~95%程度だったHCの浄化率を99.9%まで高めることができた.

3.まとめ

 数々のゼロエミッション化技術の開発により排気性能はもちろん,本技術を燃費性能向上にも徹底的に利用することを進め排気性能と燃費性能を高次元に両立させた.さらに運転性能向上のためインテークマニホールドのブランチ部形状の見直し,およびバルブタイミング(カムプロフィール)の最適化により,特に低中速域でのトルク向上を行い実用域での力強い走りを実現した.このように走りの楽しさを犠牲にすることなく,次世代の環境対応エンジンとして実用化し市場に送りだすことができた.

 以上のように,従来では不可能とされていたゼロエミッション化をガソリン内燃機関で達成したことより,将来のガソリンエンジンの一つの方向性を示すことができたと考えている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2001年、木下昌治(日産自動車(株))、西沢公良(日産自動車(株))、岩本彰夫(日産自動車(株))、荒巻 孝(日産自動車(株))、山本伸司(日産自動車(株))に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

ハイスワール燃焼、トラップ触媒、触媒活性化、EGR、ゼロエミッション、ガソリンエンジン、汚染物質抑制、未燃炭化水素、排ガス浄化触媒、空燃比制御
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