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回路網理論における基礎的研究

 回路理論は電子・通信・情報の諸分野に共通した重要な基礎理論であり、集中定数回路の理論を中核とする大系がキルヒホッフ以来130年余にわたって整備されてきている。この古典的ともいえる理論に対して、岸 源也氏は、エネルギー保存則を一般化した回路の保存関係の考察、回路網の結線構造に着目した研究、および信号波形と回路との相互関係という三つの分野で顕著な成果を挙げ、集中定数回路の理論に新しい視点を確立した。

 従来、回路で消費される電力に比べて、回路中に蓄積されるエネルギーについてはあまり検討されていなかったが、同氏は回路のエネルギー蓄積能力と群遅延時間との関係を解明し、この研究を更に推し進めて多端子対回路の保存量という概念を確立した。ここに回路の保存量とは、電圧および電流を変数とする2変数の演算子で、回路中のすべての素子に関する保存量の総和と同じ回路のすべての端子対に関するその総和とが結線構造にかかわらず常に等しいという性質をもつものと定義されている。同氏はある2変数演算子が回路の保存量となるための必要十分条件を導くと共に、蓄積エネルギー、群遅延時間、素子感度等の相互関係を明らかにし、後続の研究に新しい道を開いた。

 次に、回路網の結線構造に着目した解析の分野においても、同氏は多くの成果を挙げている。特に回路網を定めるグラフにおいて、すべての木を集合としてとらえ、その構造を解明することによって、グラフの基本分割という概念を確立した。この基本分割によれば任意のグラフは直列および並列に類する部分と対木構造をもつ部分という三つの部分グラフに一意的に分割可能である。同氏は回路網の定めるグラフを基本分割することによって、この回路網を解析する際に必要な最小数の電圧および電流変数を設定する方法を確立した。同氏のこの成果はその後の回路解析の研究ばかりでなくグラフ理論自身にも大きな影響を及ぼし、幾多の研究がこれを引用する形でなされつつある。

 同氏はまた回路の信号波形伝送上の諸性質を解明し、定係数常微分方程式の解となる波形をその有限個の標本値から決定する方法を確立し、集中定数回路理論と信号理論の接合点をなす標本化定理の一形式を導くなどの重要な成果を挙げている。

 以上のように、集中定数回路理論の分野で行われた同氏の一連の研究は回路網理論の基礎領域において回路網のもつ有限性に対する独創的な視点を確立すると共に、広く回路とシステム理論の新しい発展への扉を開いたもので、その貢献するところは極めて大きい。

 以上のような研究業績に対して、電子通信学会は1981年、岸 源也氏に業績賞を贈った。

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キーワード

回路の保存関係、グラフの基本分割、回路の蓄積エネルギー、回路方程式の最小変数、回路とシステム
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