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高耐圧低損失SiC半導体素子の開発

超高耐圧SiCダイオードの構造と静特性

図1 超高耐圧SiCダイオードの構造と静特性

超高耐圧SiCダイオードの動特性

図2 超高耐圧SiCダイオードの動特性

高耐圧SiC電界効果トランジスタの構造

図3 高耐圧SiC電界効果トランジスタの構造

高耐圧SiC電界効果トランジスタの順方向特性

図4 高耐圧SiC電界効果トランジスタの順方向特性

 現在、あらゆる分野において電力を制御するためにシリコン(Si)パワー半導体素子が使われているが、電力用途に用いる場合、Si材料を用いた半導体素子は電力変換に伴う損失が大きく、耐電圧が低いことや高温で動作できないことなど、性能的に限界に直面している。このため、Si材料に比べ、絶壊電界は約10倍大きく高耐電圧化および低損失化の面で優れるなど、物理的・電気的に優れた特性を持つSiC材料に注目し、パワーエレクトロニクス回路を構成する上で不可欠な高耐圧高性能のダイオードとトランジスタの両素子の開発に取り組んだ。その結果、超高耐電圧に耐える接合終端技術を開発し、Siでは困難な6~19.5kVのSiCダイオードを世界に先駆けて開発した。この記録は未だ破られていない。逆回復時間は約40nsであり、高耐圧Siダイオードの約1/10以下の高速にできた。また、埋込ゲートの領域を有する独自の新構造SiC電界効果トランジスタを開発し、Si電界効果トランジスタの最高電圧を3倍以上上回る5.3kVを実現し、オン抵抗はSi電界効果トランジスタの理論限界の1/230の69mΩcmを達成し、大幅な低損失を実現できた。開発したSiCダイオードおよびSiC電界効果トランジスタは、Si半導体素子の定格最高接合温度の125°Cを大幅に上回る350°Cの高温動作も確認した。

 研究着手当時は、国内外でSiC半導体素子の研究が始まったばかりであった。その頃からSiCの優れた特性に着目し、電力分野への実用化をめざして早期に研究を着手し、的を外すことなく迅速に推進した結果、Siの限界を超える大幅な高耐電圧、低損失および高速のSiCパワー半導体素子を開発し、SiCのSiに対する優位性を実証している。また、継続的に世界をリードした優れた特性を有するSiCパワー半導体素子を開発している。

 SiCパワー半導体素子を電力分野に適用することにより、パワエレ機器の大幅な小型化、低損失化、および高速化が期待でき、特に低損失化により、二酸化炭素の排出量を大幅に削減することが期待できる。また、SiCパワー半導体素子は、Siでは困難な高温環境下での使用を可能とし、電気自動車ではSiCパワー半導体素子を組み込むことにより、水冷が不要になり、低コスト化が図れ、その普及に貢献し、大気汚染の抑制を期待できる。

 以上のように、開発したSiCパワー半導体素子は、Siパワー半導体素子の特性を大幅に凌駕する優れた半導体素子であり、将来的には電力変換装置の小型化・省エネ化を図るために、大部分がSiCパワー半導体素子の組み込まれたものにかわっていくと期待される。

 電気学会は、この成果を称えて、菅原良孝氏、浅野勝則氏(関西電力㈱)、Ranbir Singh氏(Cree, Inc)に、2003年、電気学会振興賞(進歩賞)を贈呈した。


文献

[1] 菅原良孝、高山大輔、浅野勝則、R.Singh、 J.Palmour 、 林利彦、12-19kV 4H-SiCpin低損失ダイオード、2001年、第13回国際パワー半導体素子及びICシンポジューム論文集(ISPSD大阪)
[2] 菅原良孝、浅野勝則、R.Singh、J.Palmour、高山大輔、4.5kV 新高耐圧高性能SiC-FET "SIAFET、2000年、第12回国際パワー半導体素子及びICシンポジューム論文集(ISPSD ツールーズ)
[3] 浅野勝則、菅原良孝、林利彦、S.Ryu、 R.Singh、 J.Palmour、 高山大輔、69mΩcm2の超低オン抵抗を有する5kV 4H-SiC SEJFET、2002年、第14回国際パワー半導体素子及びICシンポジューム論文集(ISPSD サンタフェ)
[4] Y.Sugawara, D.Takayama, K.Asano, R.Singh, J.Palmour and T.Hayashi、12-19kV 4H-SiC pin Diodes with Low Power Loss、2001年、Proceedings of the 13th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs (Osaka)
[5] Y.Sugawara, K.Asano, R.Singh, J.Palmour and D.Takayama、4.5kV Novel High Voltage High Performance SiC-FET "SIAFET、2000年、Proceedings of the 12th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs (Toulouse)
[6] K.Asano, Y.Sugawara, T.Hayashi, S.Ryu, R.Singh, J.Palmour and D.Takayama、5kV 4H-SiC SEJFET with Low RonS of 69mOhmcm2、2002年、Proceedings of the 14th International Symposium on Power Semiconductor Devices & ICs ( Santa Fe)

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パワー半導体素子、ダイオード、トランジスタ、炭化ケイ素、低損失、省エネ、パワーエレクトロニクス
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