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確率的定性推論による空調設備診断方式の開発

近年ビル内の空調設備は多様化し、部屋の様々な使用形態に応じて設備毎に使用機器やシステム構成が異なっている。快適な空調環境を提供するためには、空調設備に対する施工・運転の信頼性や安全性を確保することが要求されるが、多様なシステムに対する画一的な診断方法は確立されておらず、必要に応じてオペレータがシステムの運転状態を観察することで異常を検知・診断している現状にあり、その計算機による自動化が切望されている。

そこで本研究では、複雑なシステムの振る舞いを、その簡単化したモデルから定性的に予測することが可能な推論手法を開発し、得られた予測挙動と実挙動との比較をもとに、対象システムの異常状態やその原因を、計算機を用いて自動的に検出・特定する方式を提案した。提案方式は、東京電力技術開発センターのVAV(可変風量制御)システム実験設備、ならびに東電病院内の各種病室に設置された多様な空調設備、熱源設備の異常診断に実適用され、センサ設置箇所不良、制御系の不具合などの診断に成功しており、システム施工時ならびに運用時の信頼性確保における省力化を可能とした。

対象システムの定牲的なモデルを用いた挙動推定の方式やこれらを利用した異常診断の枠組はこれまでにも国内外に提案されている。しかしながら、取り扱う対象が定性微分方程式でモデル化可能なものに制限されるなど、いずれも実験室レベルのシステム構築にとどまっており、実際に稼働している複雑かつ曖昧なシステムを対象に実用化した例は見られない。

本研究では、定性的モデリングに確率的概念を導入した新しいモデル化方式を開発することで、部屋に存在する機器や人間の熱源としての存在、部屋の方向、日照、窓の開閉など、形式的な取扱いが困難な要素を多数有する空調設備のモデル化を可能としている。加えて、モデル内の確率的要素を積極的に活用した新しい定性推論方式を開発することにより、生起確率の低い対象の挙動を除外し、従来から問題視されている定性推論の効率面でのデメリットを解消することができ、大規模な空調設備の挙動予測と診断を実現している。その結果、空調設備の完全自動診断システムとして、他に先駆けて実用化に成功し、高い信頼性や安全性が要求される病院内の空調設備を対象に使用されはじめている。

このように、本研究は、曖昧なモデル化とそれに基づく推論方式の開発により、空調設備の自動診断の枠組を与え、実用に供した画期的な研究である。定性推論の実用化に関する先導的研究として国内外で注目されるとともに、ビル空調設備の信頼性向上に貢献するなど、アプリケーションサイドからも高く評価されている。

電気学会は、この成果を称えて、大川剛直氏、湯本真樹氏(大阪大学)、宮坂房千加氏(山武ハネウェル㈱)に、1998年、電気学会振興賞(進歩賞)を贈呈した。


文献

[1] 湯本真樹、大川剛直、廣田憲久、宮坂房千加、確率的定性推論によるビル空調用熱源システムの不具合検知方式、1996年、平成8年11月 電気学会論文誌C

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