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最高温度462°Cまで動作するシリコンICとその応用回路の開発

近年における装置の高性能化には目覚ましいものがあり、ICの需要は益々多くなっている。用途の拡大につれ、それらが使用される環境も様々であり、特に高温においても各種のシステム制御をできるICの開発が望まれている。例えば、原子力発電、地熱発電、そして宇宙開発などでは200~460度Cの環境下で正常に動作するICが切望されている。このような高温環境下でも動作するICの材料として、炭化ケイ素やダイヤモンド等も検討されているが、ウエハの大口径化、酸化被膜形成の容易さ、コスト等の生産面から、現在の主流であるシリコンで開発することが強く望まれている。

そこで開発者らは、高温動作に適した特徴を持つIIL(Integrated Injection Logic)に着目し、これを用いたシリコンで90年度に370度C、91年度に415度C、92年度に454度C、94年度に462度Cまで動作するシリコンICを開発し、次々と動作温度の世界最高記録を更新してきた。一方、応用回路としてマイクロコンピュータにこのICを応用することを考え、250度Cでも長時間安定に動作する2ビットマイクロコンピュータの開発に成功した。

従来のシリコンICの環境温度の上限は120度Cであるため、これ以上の高温環境で使用する場合には、大規模な冷却装置が必要となり、設置場所に制約があった。例えば近年、宇宙開発の中で盛んな金星探査で見ると、金星表面は460度Cであるため、大規模な冷却装置を搭載しても観測は1時間程度に限られている。

開発者らが開発したシリコンICは、素子間分離が不要というIILの高温動作に適した特徴を活かしているが、より高温での動作を実現するために、トランジスタのPN接合のレベルまで分解した高温動作理論を確立した。また、IILの逆型トランジスタ構造における電流利得の新理論を考案し設計手法を確立した。そして、その理論と温度特性データに基づき、従来のIILとは大きく異なる接合の不純物濃度の構成と素子構造を考案して設計した。また、その不純物濃度と構造を得るために、そして作り易さを考慮して低温エピタキシャル成長とイオン打ち込みを組み合わせたセルフアライン方式によるプロセスを開発した。94年度にはプロセスと素子構造のさらなる改良を行い最高温度462度Cまで動作するシリコンICの開発に成功し、世界最高記録を大きく更新した。一方、開発したシリコンICを基本ICとして設計したマイクロコンピュータの要素回路は、250度Cにおいて4000時間以上安定に動作し、またこれらの要素回路を組み合わせて設計した2ビットマイクロコンピュータは、250度Cにおいて1000時間以上安定に動作した。開発した高温動作シリコンICは、高温環境下での各種システムを制御するICの実現に大きく貢献する画期的な開発である。

電気学会は、この成果を称えて、右高正俊氏(豊田工業大学)、竹内正佳氏(アイシン精機㈱)、川上宏樹氏(横川電機㈱)に、1996年、電気学会振興賞(進歩賞)を贈呈した。


文献

[1] 川上宏樹、右高正俊、370度Cまで動作するシリコンIILの試作、1992年、平成4年1月 電気学会論文誌C

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