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電力系統用ギャップレス避雷器の開発

九州電力隼人変電所66kV系統用ギャップレス避雷器(1975年)

図1 九州電力隼人変電所66kV系統用ギャップレス避雷器(1975年)

ギャップレス避雷器(ZnO素子)の原理と構造

図2 ギャップレス避雷器(ZnO素子)の原理と構造

ギャップ付き避雷器(SiC素子)の技術的課題

表1 ギャップ付き避雷器(SiC素子)の技術的課題

 1970年頃の電力系統用避雷器は、時代の要請(信頼性の向上・高性能化・コンパクト化)に対して技術面で応えることができず(表1参照)、経済的かつ安定な電力供給のネックであった。これは世界レベルでの避雷器技術者の共通の課題(悩み)でもあった。67年7月に松下電器産業㈱(現パナソニック(株))が酸化亜鉛を主成分とする半導体の研究開発中に偶然発見した画期的な非オーム性素子(ZnOバリスタ)の優れた性能に着目して、70年から電力系統用避雷器素子の開発を(株)明電舎(その避雷器部門が現MSA(株))は松下電器と共同で実施した。この酸化亜鉛素子を使用して開発した電力系統用ギャップレス避雷器により、上記の諸課題を一気に解決できた。図1の写真は、75年に九州電力隼人変電所に納入され、同年7月から営業運転を開始した世界初の酸化亜鉛形ギャップレス避雷器である。その後、酸化亜鉛形ギャップレス避雷器は世界的に認められ、79年には国内の500kV GIS用、カナダの500kV 超重責務形、84年には英仏海峡250kV 直流送電用など多くの世界的記録品を納入することができた。

 図2に示すように、従来のギャップ付き避雷器素子(SiC素子)は電流-電圧非直線特性が悪いため常規対地電圧(系統電圧の1/√3)において数10~数100Aの電流(続流)が流れる。従って絶縁を保つため直列ギャップにより常規対地電圧で電流が流れないようにする必要があった。一方、ギャップレス避雷器(ZnO素子)の場合は優れた非直線抵抗特性を有するので、常規対地電圧においては数10μA程度の抵抗分電流しか流れない(実質的に無続流)ため直列ギャップによる絶縁を必要とせず、ギャップレス避雷器として使用できる。また、ZnO素子はSiC素子に比べエネルギー耐量が大きい。このためギャップレス避雷器は表1に示す各種の技術課題を技術的かつ経済的に解決でき、以下のような多くの特長を有している。

ギャップが無いために

1. 多重雷に対して強い(信頼性)

2. 耐汚損特性が優れている(信頼性)

3. 急峻波電圧応答特性が優れている(高性能)

4. 避雷器の基本性能がZnO素子特性で決まるので、ZnO素子の組合せ(直列枚数、並列数)でどの様な定格電圧、重責務避雷器でも容易に設計・製造できる(実用性能)

5. GIS用・油浸形・機器複合/内蔵形(変圧器・遮断器・断路器・線路機器/機材・・・)・ポリマー形/モールド形などをコンパクト且つ経済的に設計・製造できる(実用性能)

上記の諸特長をコスト低減と併せて達成でき、現在ではUHV(1.100kV)避雷器まで適用されている。

 40年代から60年代までは、炭化珪素を主成分とする非直線抵抗素子(SiC素子)と直列ギャップからなる避雷器が世界の主流であった。当初直列ギャップは金属電極と絶縁スペーサーからなる簡易な火花放電ギャップ(多重ギャップ)であったが、50年代には磁気吹き消しギャップが開発され続流遮断性能と保護性能が大幅に改善され、60年代には極めて強力な磁気吹き消しギャップ(限流ギャップ)が開発・実用化され、世界的に普及して究極の避雷器になるかと思われた。しかし直列ギャップ付き避雷器の原理的弱点である技術課題(表1参照)が未解決の課題として残り、高度情報化社会に必要な信頼性・高性能・コンパクト化・経済性の向上という要請に応えることが出来ず、世界の避雷器技術者の悩みの種であった。67年に発見されたZnOバリスタをベースに70年から松下電器(当時)と明電舎の共同研究により開発・実用化・普及された電力系統用ギャップレス避雷器(ZnO素子)は表1の諸課題をコスト低減と併せて完全に解決した純日本発の革新製品である。

 電気学会は、この成果を称えて、小林三佐夫氏、林正彦氏、松岡道雄氏に、1978年、電気学会振興賞(進歩賞)を贈呈した。


文献

[1] 錦織亨、増山勇、松岡道雄、日永田春一、小林三佐夫、水野充、酸化亜鉛を主成分とするギャップレス電力用アレスタ、1973年、昭和48年電気学会全国大会 No,777 pp1010~1011
[2] M. Kobayashi, M. Mizuno, T. Aizawa and K. Mitani、Development of Zinc-oxide Non-linear Resistors and Their Applications to Gapless Surge Arrester、1977年、IEEE Transaction on Power Apparatus and Systems, 1977 Vol. PAS-77 No.4, July/Aug. 1978
[3] 小林三佐夫、林正夫、酸化亜鉛形ギャップレス避雷器開発の時代背景と推移(その1) ~家電用バリスタの発見から電力用ギャップレス避雷器開発まで~、2008年、電気学会 電気技術史研究会 HEE-08-19 2008
[4] M. Kobayashi and M. Hayashi、The background and history of developing Gapless Metal Oxide Surge Arrester、2008年、Research Repot of IEE Japan, HEE-08-19 ( in Japanese and English ) Dec. 2008

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キーワード

革新技術、酸化亜鉛形避雷器、ギャップレス、高性能、高信頼性、実用性(コンパクト化、経済性)、高電圧・大電流、放電
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