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フォトニクス技術による未利用電磁波帯の開拓と無線通信への応用に関する先駆的研究

フォトニクス技術を利用した高周波電気信号・電波の計測手法

図1 フォトニクス技術を利用した高周波電気信号・電波の計測手法

フォトにクス技術を送信機に利用した120GHz帯無線リンクの構成

図2 フォトにクス技術を送信機に利用した120GHz帯無線リンクの構成

非圧縮高精細(HD)映像信号の多重無線伝送システムの構成

図3 非圧縮高精細(HD)映像信号の多重無線伝送システムの構成

 情報通信ネットワークにおける有線(光ファイバ等)通信と無線通信との伝送速度のギャップは一けたを超える差となっており、かねてより大きな課題となっていた。永妻忠夫氏、枚田明彦氏、小杉敏彦氏らは、無線通信のブロードバンド化のブレークスルーとして、これまで未利用であった100GHzを超える周波数帯の電磁波を利用することに挑戦し、10Gbit/sの伝送速度の無線システムを世界に先駆けて実現した。特にフォトニクス技術を利用して100GHz~1THzの電磁波を高精度に発生し検出する技術は、新しい電磁波帯の開拓の礎となるものであり、更に120GHz帯電波を用いた無線システムに同技術を適用することにより、非圧縮高精細映像信号を最大6チャネルまで伝送できる画期的なシステムを開発した。これは、現在最もブロードバンドの信号伝送・処理を必要とする放送や映像の分野に大きなインパクトを与えるものである。

 永妻忠夫氏は、フォトニクス技術を用いて100GHzを超える電波の発生及び検出技術の基礎を作るとともに、無線通信への応用を提案し研究開発を先導してきた。また、計測技術に関して、電気光学サンプリングと呼ばれる光計測技術を利用した高周波電気信号計測技術を確立し、無線システムに必要となる電子・光デバイス、アンテナなどのキーコンポーネントの研究開発に活用した。この計測技術がなければコンポーネントの進展はあり得なかったともいえる。さらに同氏は、光と電波(エレクトロニクス)の融合技術に関する研究分野において、その創生期から現在に至るまで内外の学会活動に献身的に尽力してきた。

 枚田明彦氏は、120GHz帯を利用した無線リンクのシステム開発を行い、2005年に総務省より100GHzを超える周波数帯において世界で初めて無線実験局の免許を取得し、フィールドトライアルを通して実用性を世に示してきた。特に、高純度、高安定、周波数可変の光サブキャリヤ信号発生技術を確立し、この技術とフォトダイオード、アンテナとを組み合わせたミリ波無線送信機の開発が実証実験の成功の決め手となった。

 小杉敏彦氏は、上記無線システムの実用に向け、世界屈指の性能を有するInP HEMT(高電子移動度トランジスタ)技術を用いて、120GHz帯ミリ波集積回路並びに送受信モジュールの開発を行ってきた。特に、送信機の10mWを超える高出力化と受信機の高感度化に注力し、無線リンクの長距離化(>1km)をもたらした。

 以上のように、100GHzを超える周波数帯は、これまで電磁波の発生技術並びに検出技術が未熟であったことから、通信はもとより産業応用に向けた研究開発がほとんどなされていなかったが、三氏らは放送業界と連携したフィールド実験に加え、国際展示会(International Broadcast Equipment Exhibition:日本、National Association of Broadcasters:米国、International Broadcast Convention:ヨーロッパ)における動態デモンストレーションを通して、未利用電磁波帯の産業的有用性を広く訴え続けてきた。その結果、高精細映像伝送用途をはじめとするブロードバンド無線通信技術の実用化に道筋をつけた。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2007年、永妻忠夫氏、枚田明彦氏、小杉敏彦氏に業績賞を贈った。


文献

[1] T. Nagatsuma, M. Shinagawa, N. Saburi, A. Sasaki, Y. Royter, and A. Hirata、1.55-micron Photonic Systems for Microwave and Millimeter-wave Measurement、2001年、IEEE Trans. Microwave. Theory Tech., vol.49, no.10, pp.1831-1839, October 2001
[2] T. Nagatsuma、Exploring Sub-Terahertz Waves for Future Wireless Communications (Plenary Talk)、2006年、Proc. Int. Conf. Infrared and Millimeter Waves/Terahertz Electronics, p.4, September 2006
[3] A. Hirata, T. Kosugi, H. Takahashi, R. Yamaguchi, F. Nakajima, T. Furuta, H. Ito, and T. Nagatsuma、120-GHz-Band Millimeter-Wave Photonic Wireless Link for 10-Gbit/s Data Transmission、2006年、IEEE Trans. Microwave. Theory Tech., vol.54, no.5, pp.1937-1944, May 2006

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フォトニクス技術、120GHz帯無線リンク、120GHz帯送受信モジュール、無線通信システム
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