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超大容量波長多重光海底ケーブル方式の開発

本技術が適用された光海底ケーブル

図1 本技術が適用された光海底ケーブル

 ブロードバンドサービスの普及により通信のグローバル・大容量化が進展しており、光海底ケーブルは、国際間のトラヒックを収容する大容量通信インフラとしてその重要性を増している。近年の通信容量の飛躍的増大をもたらした大きな技術革新は、光信号の高速化技術、電気を介さず光信号を直接増幅する光増幅技術、並びに、一本の光ファイバに波長の異なる複数の光信号を多重する波長多重通信技術である。これらの技術の進展により、最新の陸上並びに海底ケーブル技術では、ファイバ当りの伝送容量が1Tbit/sを越える領域に達している。

 光海底ケーブルでは、1995年に開通した第5太平洋横断ケーブル(TPC-5)で初めて光増幅中継方式が採用され、伝送容量が従来の8倍の5Gbit/sまで大容量化された。光増幅中継方式は、中継器コストや消費電力が従来に比べて大幅に低減できる一方で、光ファイバの非線形光学効果や波長分散などにより生じる波形ひずみが累積する。特に、10Gbit/s以上の高速光信号を用いて8,000km以上の太平洋横断波長多重伝送を行う場合には、非線形効果と波長分散が相互に作用し合い、不可逆的な波形劣化が顕著になるという大きな問題があり、その解決には、既存の陸上用光通信技術にはない独自のシステム技術が必要であった。このため、従来の大洋横断海底ケーブルには1波長当り2.5Gbit/sの4~8波長多重方式が採用されていた。

 鈴木正敏氏、枝川登氏、松島裕一氏らは、高速信号を用いる波長多重長距離伝送に関する技術課題に90年代初頭から取り組み、10Gbit/sの高速光信号を用いた超大容量・波長多重大洋横断光海底ケーブル方式の開発に世界で初めて成功し、太平洋及び大西洋横断160Gbit/s光海底ケーブル、並びに、アジア諸国を結ぶ640~960Gbit/sの超大容量光海底ケーブルの実現に多大な貢献をした。

 鈴木正敏氏は、主に、高速信号の波長多重伝送における非線形効果による特性劣化を最小化するため、ソリトン光源を改良した位相変調型RZ光パルス送受信技術を開発するとともに、RZ光信号を用いる長距離伝送方式を確立した。枝川登氏は、主に、低雑音・広帯域光増幅中継器技術と、非線形効果と分散効果の異なる2種類の光ファイバを組み合わせて光信号波形劣化を低減した光ケーブル技術の開発に取り組み、高速光信号の波長多重・長距離伝送に伴う技術課題を克服した。更に、松島裕一氏は、低雑音光増幅器の実用化に不可欠な高出力980nm半導体レーザの開発に取り組み、世界に先駆けて光海底ケーブルに適用可能な超高信頼度化980nm励起用レーザの開発に成功した。

 三氏らは、波長多重大容量光海底ケーブル用の光送受信技術、低雑音光増幅中継器技術、低非線形光ケーブル技術などの新規の個別要素技術を開発した後、大規模室内伝送設備を用いて、10Gbit/s、16波長多重伝送方式に関する1年以上の長期総合試験を行い、同方式が大洋横断光海底ケーブルに適用可能であることを世界で初めて実証した。同方式は、多くの国内メーカの支援・協力のもと、2000年代初頭に敷設されたTAT-14大西洋横断ケーブルやJapan-US太平洋横断ケーブルなどの主要な大洋横断光海底ケーブルに採用され商用化されるとともに、距離による制約が緩和されるアジア地域の海底ケーブルでは、10Gbit/s、64~96波長多重伝送システムとして商用化された。

 以上のように、三氏らは、各々の専門技術を結集し超大容量波長多重光海底ケーブル方式の総合的システム化を成し遂げた。世界に先駆け開発した同方式は、アジア・太平洋・大西洋に渡る世界中の海底ケーブルで採用され、大容量グローバルネットワークの発展に多大な貢献をした。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2004年、鈴木正敏氏、枝川登氏、松島裕一氏に業績賞を贈った。


文献

[1] M. Suzuki et al.、170 Gb/s transmissin over 10,850 km using large core transmission fiber、1998年、Proceedings of Optical Fiber Communication Conference OFC'98, San Jose, California, PD17, February 1998
[2] 山本 周、鈴木正敏、光増幅技術の応用による国際光海底ケーブル方式の研究開発、1998年、電子情報通信学会誌、Vol.81, No.12, pp.1195-1217, 1998
[3] Shu Yamamoto and Masatoshi Suzuki、Research and development of international optical submarine cable system using optical amplifiers、1998年、IEICE, Vol.81, No.12, pp.1195-1217, 1998
[4] Masatoshi Suzuki and Noburu Edagawa、Dispersion-managed high-capacity ultra-long-haul transmission、2003年、IEEE Journal of Lightwave Technology, Vol.21, pp.916-929, April 2003

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