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半導体SiCの高品質エピタキシャル成長と次世代電子デバイスの基礎研究

 近年、移動体通信やパワーエレクトロニクス技術の進展が著しく、携帯情報機器、電源、インバータなどの小型化、高効率化が進められている。半導体デバイスは、これら電子機器ハードウェアの中で重要な役割を果たしているが、現用のSi、GaAs系デバイスでは、材料固有の物性に起因する性能限界が見えてきている。ワイドギャップ半導体SiCは、SiやGaAsに比べて、絶縁破壊電界が約10倍、電子の飽和ドリフト速度が約2倍という優れた物性を有するため、はるかに高耐圧、低損失、かつ高速で動作する電子デバイスが実現できる。しかしながら、高品質の結晶成長が困難であり、デバイスプロセス技術も確立されていなかった。

 松波弘之氏は、1970年代初頭から一貫してSiC半導体の研究に取り組み、幾多の困難な問題を解決して電子デバイスへの道を開いてきた。特に、SiC表面ステップの形成により、成長時に本材料特有の複雑な結晶多形を制御する「ステップ制御エピタキシー法」を1987年に考案し、それまでは不可能であった高品質SiC単結晶層を再現性良く作製することに成功した。1990年ごろからは、木本恒暢氏と共同して、不純物添加によってp型、n型の精密な導電性制御法を確立し、この高品質結晶を用いて、多くのSiC固有の物性を明らかにした。現在、世界中で本結晶成長法が採用され、高周波デバイス、パワーデバイス開発が進められている。

 上記の方法で作製したSiC結晶を用い、次世代電子デバイスの基礎研究として、両氏は次のような顕著な成果を挙げてきた。

 まず、高耐圧・高速・低損失のショットキーダイオードを試作し、実用性の可能性を示してきた。最適な障壁高さの理論検討や電界集中緩和構造の考案を通じ、初めてSiダイオードの性能を2けた以上突破する高性能SiCショットキーダイオードを実現した。この成果を基にして耐圧300V~1,200VというSiでは実現できない高耐圧・高速のショットキーダイオードが実用化されている。現在、開発が進められている金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)にもこの成果が活用されている。また、高ドーズイオン注入による半絶縁性SiC層の形成においても先駆的な研究を発展し、当該分野におけるデータベースを実験的に構築した。エピタキシャル成長やイオン注入によるpinダイオードの研究でも、3kV以上の耐圧を実現するなどの優れた成果を挙げている。

 SiCはSiと同様に熱酸化によってSiO2膜を形成できるという特長を有するが、当初SiO2/SiC界面には多数の欠陥が存在したために、反転層のチャネル移動度が極端に小さいという問題があった。1999年、両氏は、SiCの新しい結晶面方位(1120)を用いることによって、MOS電界効果トランジスタ(MOSFET)の性能を1けた以上向上させた。更に、イオン注入とMOS界面制御技術を集約して、Siの理論限界を突破する高耐圧(>1kV)横型SiC MOSFETを実現した。

 これらのSiC半導体に関する先駆的な研究成果は、移動体通信用基地局の送信機や、各種電源、自動車用インバータなどの大幅な小型化、及びエネルギーの有効利用につながるものであり、欧米及び国内の大型研究プロジェクトや半導体産業に大きな影響を与えている。

 以上のように、両氏はSiC半導体の結晶からデバイスに関する多くのブレークスルーを成し遂げた。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2004年、松波弘之氏、木本恒暢氏に業績賞を贈った。

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半導体シリコンカーバイド、高品質エピタキシャル成長、ステップ制御エピタキシー法、その他(電子・デバイス一般)
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