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立体視の新たな原理の発見に基づく3D映像処理の研究開発

 近年、ブロードバンドの普及に伴って高臨場感通信技術への期待が高まっている。中でも、立体(3D)表示技術は、物体の空間的な位置関係をリアルに再現することで新しい映像の世界を切り開くものとして期待されている。

 3D表示技術の研究には非常に長い歴史があり、両眼視差を利用した立体表示装置に始まり、ホログラフィーやボリュームディスプレイ(VD)など幾多の表示技術が研究されてきた。しかし、疲労、方式面での複雑さ、また、データ量の問題など一長一短があり、広く実用に供されるには至っていない。特に、奥行き方向に複数画像を重畳して表示するVDは将来性もあり疲労の問題が少ないと考えられるが、一般画像では半透明に表示される問題があった。同様に、明暗比率を変化させた2D画像を奥行き方向に重畳表示する微分両眼立体視方式は、滑らかで緩やかな奥行き変化を持った画像を対象としているが、広く一般画像を呈示する場合には適用できなかった。

 これに対して、DFD(Depth-fused 3-D)と名付けられた本方式は、奥行き情報に基づいて明暗比率を変化させた2D画像を前後に重畳表示する際に、新たに発見された「一般的な2D自然画像から一つの融合した3D画像を人間が知覚するメカニズム」を利用するものである。疲労についてはVDと同等の効果を期待できると同時に、構成が簡単であり、扱うデータ量も少なく実用的である特徴を有している。

 まず、陶山史朗氏は、従来のVDを改良する試みの中で新しい知覚現象を発見した。具体的には、奥行き情報に基づいて明暗比率を変化させた同じ輪郭の2枚の2D自然画像を丁度重なった状態で観察すると、2枚ではなく、1枚の融合した3D画像として知覚される現象であり、高田英明氏と共同でその現象の再現性を確認するプロトタイプを構築した。

 つぎに、大塚作一氏は、この特異な現象のメカニズムを研究し、人間の両眼立体視に関する新たな知覚メカニズムが関与していることを明らかにした。DFDの知覚が生じる場合には、(1)人間が通常行っている高い空間周波数を含んだ左右網膜画像のエッジの対応づけに失敗するために2面の分離ができない、(2)その結果、低い空間周波数の領域を用いて左右の対応づけを行うため前後画像の明暗比率に応じた奥行きとして知覚される、(3)最終的に統合されて知覚される物体の輪郭については、高い空間周波数を含んだ形で知覚されるので奥行きに関して不自然な知覚は発生しない、という仮説を立て、陶山史朗氏、高田英明氏とともに実験を行い検証した。

 更に、高田英明氏は、陶山史朗氏と共同し、実時間での2D画像と奥行き画像の同時取得技術、輝度分配技術、実装技術、小型化技術などの総合的な研究開発を行った。特に最近開発したDFD表示装置は、前後2枚の液晶セルにおける偏光の加算技術を利用することで、従来に比べて大幅な小型化・薄型化を達成し、実用性を格段に向上させた。

 そのほか、本原理は発光ディスプレイを用いて輝度を加算する条件のみならず、濃度を有する半透明媒体の重ね合わせ条件でも実現可能である。したがって、静止画であれば印刷媒体を用いることにより、安価で大量に供給することが可能である。

 以上のように、三氏らは各々の専門分野の能力を巧みに結集し、人間の視覚システムを利用した新たな奥行き融合3D映像装置を開発したものである。3D映像装置の新たな可能性を示し、また、画像通信・印刷媒体等への広範な応用も期待される。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2003年、大塚作一氏、陶山史朗氏、高田英明氏に業績賞を贈った。

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3D映像装置、DFD方式、高臨場感システム
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