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リアルタイム三次元グラフィックス用プロセッサLSIの開発

 最近の半導体技術の進歩に伴い、パソコン(PC)などの性能が向上し、リアルタイムの画像処理が可能になってきている。しかし、PCは元来三次元グラフィックス指向でないために取り扱いが難しく、かつ高価である。そこでゲーム機、DVDプレーヤ、ディジタルTVなど大きな広がりを見せているディジタル家電機器のために動画像、特にリアルタイム三次元グラフィックスの処理の高速化、低コスト化が強く望まれていた。

 斎藤光男氏、田胡治之氏、廣井聡幸氏は以上のような状況に対応して、特にリアルタイム三次元グラフィックスに適したマイクロプロセッサ(CPU)の開発を行い、圧倒的に高性能で低コストのLSIを完成させた。本LSIは、今後家庭内の中核機器となる可能性を持つ画期的な性能のゲーム機を実現させ、現在までに1,000万個以上生産され、新しい時代を開く製品として、世界的に大きなインパクトを与えている。

 従来のPC用などのCPUは、性能向上のために、ひたすらクロック周波数の向上を目指していた。しかし周波数向上の割には特にメインメモリとの間のバンド幅(データ転送周波数×データ幅)が向上せず、結果的にCPUのスループットが頭打ちになっていた。また、周波数向上のために内部の構造が複雑化し、そのため開発期間の増大と進歩のサイクルの鈍化を招いていた。

 これに対し、本LSIは従来と全く異なる設計思想で、リアルタイム性を重視し、周波数のみではなく、高いメモリバンド幅の実現を目指している。そのためプロセッサ部分は比較的簡単な制御機構を採用し、しかも高いバンド幅を実現するために、現在のCPUデータ幅64bitの2倍の128bitデータバスを採用し、特にマルチメディア専用命令の効率化を果たしている。また三次元グラフィックス演算を効率良く行うためにプロセッサ部分とは独立した浮動小数点演算用のベクトル演算ユニット2個を搭載し、合計10個の積和演算器と4個の除算・開平演算器を搭載することにより、6.2G FLOPSと、従来のスーパコンピュータに匹敵する浮動小数点演算能力を実現している。また、ソフトウェアで制御可能なハードウェアのMPEG-2デコーダを搭載することにより、三次元グラフィックス演算と、DVDの再生を同時に行えるなど、大量の画像データのリアルタイム処理に適した構成となっている。

 また、最先端の0.18μmデザインルールの半導体技術を駆使し、1,350万個ものトランジスタを1チップの中に集積し、しかも複数の機能ブロックを含んだLSIにもかかわらず300MHzという高速処理の達成に成功した。このような高性能LSIを1チップで実現し、ローコストで量産したことにより、高性能の家庭用ゲーム機の実現を可能とした。

 以上の優れた特性から、今後、このようなCPUアーキテクチャはゲーム用途のみならず、今後一般のマルチメディアのアプリケーションを支える標準的なプロセッサ方式になるものと期待される。

 以上のように三氏の開発した、新しい思想に基づくプロセッサはリアルタイム三次元グラフィックスのアプリケーションでPC用CPUの性能を大きく上回り、しかもローコストで量産可能であることを実証した。このことは来るべきシステムオンチップ時代の先駆けとなるとともに、ディジタル家電と呼ばれる新しい分野がPCに替って、今後のCPU開発の牽引力となっていくことをも示している。これは単に高性能LSIの開発にとどまらず、世の中に大きなインパクトを与える製品の実現を可能にし、新しい技術の流れを作った意義は大きい。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2001年、斎藤光男氏、田胡治之氏、廣井聡幸氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Mitsuo Saito、System LSI Technologies for Mobile and Digital Consumer Products. Progress of Semiconductor Technology and System on Chip、2002年、TOSHIBA REVIEW VOL.57 NO.1

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リアルタイム3次元グラフィックス、画像処理プロセッサ、LSIアーキテクチャ、コンピュータグラフィックス、計算機アーキテクチャ
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