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光ファイバアンプ励起用高出力レーザモジュール

光ファイバアンプの構成

図1 光ファイバアンプの構成

1480nm高出力レーザの構造模式図

図2 1480nm高出力レーザの構造模式図

1480nm高出力レーザの活性層(発光層)部分の断面透過電子顕微鏡写真

図3 1480nm高出力レーザの活性層(発光層)部分の断面透過電子顕微鏡写真

 インターネットを中心とした情報通信技術の急激な進展は産業革命以来の大きな変革と認識されており、21世紀の世界経済の発展と人々の生活の向上に大きく貢献することが期待される。インターネットにより生み出されたデータ通信量の増大により、通信のバックボーンとなる基幹回線系は数百Gbit/sからTbit/sレベルの大容量システムが必要となり、波長多重(WDM)通信技術により実現されるに至った。

 このWDMシステムは、ある波長範囲の光を光のままに一括増幅できる光ファイバアンプが実用化されたことによって初めて、伝送システムとしての経済性が確保され、商用システムへの導入が実現したものである。この光ファイバアンプのキーコンポーネントの一つが励起用高出力レーザモジュールである。現在の商用システムで専ら使用されているエルビウムドープ光ファイバの場合、エルビウムイオンが持つ固有の励起エネルギー準位から、波長が1,480nmまたは980nmの励起光により1,550nm帯の信号光が増幅される。高出力アンプを実現するためには、励起光として100mW以上のファイバ端出力が要求され、更に基幹幹線系に用いられるため高い信頼性も要求される。

 粕川秋彦氏、伊地知哲朗氏、池上嘉一氏は、1980年代終りから高信頼・高出力の1,480nm、980nmレーザモジュールの研究開発を開始し、長年にわたりこれらの商品化と高性能化に貢献してきた。粕川氏は1,480nm、980nmレーザ素子に関して、レーザ設計、結晶成長、素子作製技術全般を担当した。伊地知氏は980nmレーザの高信頼化と両レーザ素子、モジュールの量産化技術を担当した。池上氏は、1,480nm、980nmレーザの高信頼化とモジュール化技術を担当した。実用化に至るまで様々な苦難を伴ったが、以下これらの取組みのキーポイントを述べる。

 通信用の光源として一般に用いられるレーザは、光出力レベルが数mWから10数mW程度であり、高出力・高信頼励起用レーザを実現するためには、設計概念の根本的な見直しが必要であった。ひずみ量子井戸構造から更に進歩したひずみ補償型量子井戸構造を有する活性層を新たに導入することにより、結晶欠陥のない高品質活性層を実現させ高出力化と高信頼化を同時に達成した。更にひずみ補償型量子井戸活性層の利点を最大限に引き出し低消費電力で可能な限りの高出力動作を達成するために、レーザ共振器の損失を極限レベルにまで低減させることに成功した。これは量子井戸層の厚さを10数原子層にまで薄膜化することと、従来ほとんど検討されていなかったレーザ構造の中の光閉込め層とpn接合を形成するドーピング量を最適化することによって実現したものである。また特に980nmレーザに関しては独自の端面保護構造を開発することにより、従来しばしば発生していた端面光学損傷(COD)が皆無となり、十分な信頼性を確保した。

 以上の結果、1,480nmレーザでは最高光出力500mW以上、推定寿命100万時間以上、980nmレーザでは最高出力600mW以上、推定寿命50万時間以上を実現した。

 レーザ光を単一モードファイバに結合させるモジュール化技術に関しては、単一モードファイバとの高効率結合技術及び耐環境性に優れた高信頼設計技術を検討した。前者に関しては、レーザの発光ビーム形状に対応したファイバの結合形の設計を行った。すなわち1,480nmレーザに対しては2レンズ系結合法を、980nmに対してはレンズドファイバ結合法を採用することにより、いずれも80%以上の高結合効率を実現した。後者の高信頼設計に関しては、エポキシフリーの接合技術としてはんだとYAG溶接による接合技術を確立し、更にモジュール機構部品の材料・構造の最適設計を行うことにより、十分な温度特性と耐環境性を実現した。

 以上述べたレーザモジュールの実用化により高利得・高出力光ファイバアンプが実現し、WDM伝送技術を用いた大容量光ファイバ通信ネットワークの構築に世界的に大きく貢献している。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2001年、粕川秋彦氏、伊地知哲朗氏、池上嘉一氏に業績賞を贈った。


文献

[1] 粕川秋彦、向原智一、山口武治、城川潤二郎、光ファイバアンプ励起用高出力半導体レーザの現状、2000年、古河電工時報、平成12年1月、第105号
[2] 粕川秋彦、光通信用長波長帯光半導体、2005年、応用物理、第74号、第7号、pp.957-961
[3] A. Kasuakwa, T. Mukaihara, T. Yamaguchi, and J. Kikawa、State of the art high power lasers for EDFA、2000年、Furukawa Technical Journal, Vol. 105
[4] A. Kasukawa、Compound semiconductors for optical communications in the long wavelength regime、2005年、OYO-BUTSURI, Vol.74, No.7, pp.957-961

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