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知的情報通信システムの設計法とその応用

 インターネットに代表される広域情報ネットワーク環境の拡大と浸透に伴って、多数の利用者の多様な要求にこたえられる知的なサービスや利用者向きアプリケーションを効果的に提供できる情報通信システムの実現が急務となっている。ところが、こうした情報通信システムの形態は大規模・複雑化する傾向にあり、その設計開発はますます困難な作業となってきており、システム構築面における大きな問題となりつつある。

 白鳥則郎氏、菅原研次氏、木下哲男氏は、1980年代中盤からこの問題の重要性に着目し、来るべきネットワーク社会を支える情報通信システムの設計開発を効果的に支援する方式に関する研究開発を開始した。その基本指針として、第1に、優れた設計者や技術者が保有する貴重な設計知識や設計情報の効果的な活用、第2に、利用者指向の情報通信システムのアーキテクチャ(機能と構造)の柔軟性や頑健性の向上、という二つのコンセプトを掲げ研究開発を推進した。

 まず、第1のコンセプトに基づくシステム設計支援に関する研究開発では、知識型設計方法論と呼ぶ設計法が提案された。この設計法で特筆すべき点は、ネットワーク設計者やアプリケーション設計者の持つ専門的な設計知識のみならず、設計目標となる情報通信システムにかかわる種々の知識を蓄積し、それらをシステム設計過程で効果的に活用するための枠組みを与えたことにある。本方法論を適用することにより、情報通信システムの上位層プロトコルやアプリケーションサービスなどの設計作業が系統的に支援できることを示した。その成果は、1988年のIEEE JSAC「特集:通信網におけるAI」の15編の論文中の3編の論文として採録・掲載され、同分野におけるパイオニア的研究として世界的に高く評価されている。

 これらの成果を踏まえ、三氏は、第2のコンセプトに基づく先駆的研究を1990年代初頭から開始した。そして、次世代情報通信システムの設計開発の基盤となる考え方として「やわらかいネットワーク」と呼ぶ概念を提案した。これは、情報通信システムの機能要件として、その利用者の要求や利用条件の変化、及びシステム稼動環境におけるシステムの機能的・構造的な変動に対して、情報通信システム自身が能動的かつ柔軟に対処できる能力の実現を標榜し、次世代情報通信システム構築の指針を与えるものとなっている。また、三氏は、やわらかいネットワーク概念に基づく次世代情報通信システムを実現する手段として、エージェント指向分散処理システム構築支援環境「ADIPS」を提案し、そのプロトタイプを開発するとともに、ADIPSに基づくエージェント指向情報通信システムの設計手法を与えることに成功した。

 これを受けて、IPA(情報処理振興事業協会)の創造的ソフトウェア開発プロジェクトの受託研究(1996~1998年度)では、上記ADIPS及びやわらかいネットワークの実用化研究が推進され、その成果の一部は「知的グループウェア」の製品化において効果的に活用された。更に、改良と拡張を施されたADIPSは、高齢者向きの「自律歩行型外出支援システム」の開発に適用された。このシステムでは、「自律型歩行機」の管理者の作業の一部をエージェントが代行し、家族やケア・マネージャが高齢者の外出先での様態を簡単に管理できるようにするもので、その実験が成功裏に終了している。

 以上のように、三氏は、ネットワーク社会のインフラとなる知的情報通信システムの開発を効果的に支援する設計法とその応用技術の高度化において先導的役割を果たすとともに、これら技術の産業応用にも大きく貢献している。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2001年、白鳥則郎氏、菅原研次氏、木下哲男氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Noriao Shiratori, Tetsuo Kinoshita and Kenji Sugawara、Flexible Networks: Basic Concepts and Architecture、1994年、IEICE Transactions on Communications, Vol.E77-B, No.11, pp.1287-1294, November 1994
[2] 白鳥則郎、木下哲男、菅原研次、共生空間の実現へ向けて-ポストモダン分散システム、1997年、電子情報通信学会誌、Vol.80, No.2, pp.165-168, 1997
[3] 白鳥則郎、木下哲男、菅原研次、やわらかいネットワーク、2002年、情報処理学会誌、Vol.43, No.6, 通巻448号、pp.639-644, 2006
[4] Norio Shiratori, Tetsuo Kinoshita and Kenji Sugawara、Towards Human-Agent Symbiotic Space: Post-modern Distributed System、1997年、Journal of the Institute of Electronics, Information and Communication Engineers, Vol.80, No.2, pp.165-168, 1997
[5] Norio Shiratori, Tetsuo Kinoshita and Kenji Sugawara、Flexible Networks、2002年、Journal of the Information Processing Society of Japan, Vol.43, No.6, pp.639-644, 2002

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キーワード

情報通信システム、知識型設計方法論、やわらかいネットワーク、ADIPS、情報ネットワーク
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