1. HOME
  2. 電気・情報関連(専門)
  3. 研究情報(登録番号1021)

256QAM無線中継方式の実用化

ディジタル無線方式の開発状況

図1 ディジタル無線方式の開発状況

256QAM変調の原理

図2 256QAM変調の原理

256QAM方式実現のための技術

図3 256QAM方式実現のための技術

 21世紀の情報化社会へ向けて、電気通信網は電話から、ディジタル通信技術に支えられたマルチメディアの時代へと、目覚しく進展している。この変革にこたえるべく、無線伝送路においてもディジタル化・大容量化が強力に推進されている。

 無線通信においては、周波数をできる限り有効に用いることが重要なことであり、高能率なディジタル変調技術の実現が望まれていた。

 小牧省三氏、村瀬武弘氏、小檜山賢二氏は256QAMという超多値変調方式を使用し、単位周波数当り10bit/sという世界にも類をみない周波数利用効率を有する画期的な無線中継方式を実用化した。

 本方式の実用化に当たっては、まず雑音や干渉のレベルを従来の1/10にする必要があり、256値の信号を正確に識別できる高精度の変復調技術を開発する必要があった。そこで、まず振幅、位相誤差を従来回路に比べ1/5に改善したモノリシックICを用いた変調器を考案すると共に、復調器側では受信信号のパターンによって変動する識別中央点を自動的に調整する補償回路を考案して安定化を達成し、符号誤り率特性に優れた256QAM変復調装置を実現した。

 一方、マイクロ波無線通信ではマルチパスフェージングの問題を解決する必要があった。マルチパスフェージングは送信された波が一つにならずに地面等からの反射波や回折波が同時に受かることにより発生するが、その場合にはレベル低下により雑音が増加したり、伝送波形がひずむこと等により回線品質が著しく劣化する。多値伝送ではその影響が極めて大きく、フェージングを克服するための波形等化技術・干渉補償技術について、ブレークスルーを生み出す必要があった。

 そこで、まず信号を複数のキャリヤで分けて伝送するマルチキャリヤ方式を適用し、各マルチキャリヤごとに位相検出・同相合成するスペースダイバーシチ法を開発した。更にフェージング時の波形ひずみを等化するため、DSP技術を駆使した高速高精度の全ディジタル形トランスバーサル自動等化器を考案した。

 更に、本方式を広く国内に導入するためには干渉補償技術を開発する必要があった。そこで水平・垂直偏波間の干渉および他ルートからの干渉を保証するため新たに考案したSBS(シフトビットセレクト)制御アルゴリズムに基づく全ディジタル形干渉補償器を実現して、干渉雑音を1/10に低減した。

 これらの技術を用いることにより、従来方式に比して伝送容量・周波数利用効率共に倍増した256QAM無線中継方式を実現した。この方式は全国に導入され、通信のネットワークの大容量化・高信頼化に重要な役割を果たしている。

 また、本方式を実現する過程で生み出された多値変調技術、各種フェージング補償技術、干渉補償技術は無線通信の基盤技術をなす画期的なものであり、無線中継方式のみならず、広く他の分野への波及効果が期待される。

 以上述べたように、三氏は本方式の開発を通して、人類固有の財産である電波資源の有効利用に貢献した。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1994年、小牧省三氏、村瀬武弘氏、小檜山賢二氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Yoichi Saito, Shozo Komaki, Masayoshi Murotani、Feasibility Consideration of High-level QAM Multicarrier System、1984年、IEEE Proceeding of the ICC’84, pp.665-671, May 1984
[2] 村瀬 武弘, 山後 純一, 小牧 省三, 佐々木 収、4・5・6G-400M方式設計、1988年、NTT研究実用化報告, 第37巻, 第9号, 475-505ページ, 1998年9月
[3] 小檜山 賢二, 村瀬 武弘, 山後 純一, 小牧 省三, 齊藤 洋一, 中谷 清一郎、256QAMマイクロ波無線中継方式、1990年、電子情報通信学会誌, Vol.73, No.8, pp.845-856, 1990年8月
[4] Takehiro Murase, Junichi Sango, Shozo Komaki and Osamu Sasak、4,5,6G-400M Digital Radio System Design (in Japanese)、1988年、NTT R&D Report, Vol.37, No.9, pp.475-505, Sep.1988
[5] Kenji Kohiyama, Takehiro Murase, Junichi Sango, Shozo Komaki, Yoichi Saito and Seiichiro Nakatani、256QAM Microwave Radio System (in Japanese)、1990年、Journal of the IEICE Japan, vol.73, no.8, pp.845-856, Aug. 1990

関連する研究を検索

分野のカテゴリ

通信
(通信に係わる技術)

関連する出来事

データなし

世の中の出来事

1994
松本サリン事件が起こる。
1994
自民党と社会党の連立による村山内閣が発足する。

Webページ

データなし

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

256QAM無線中継方式、無線通信システム
Page Top