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誤り訂正符号の構成と復号法に関する研究

 誤り訂正符号は雑音のある通信路における信頼性の向上を目的として構成された符号であり、近年の大容量ディジタル通信システムおよび大容量記録システムにとって、それぞれ低電子狭帯域および低品質媒体高密度のもとで高品質かつ高速な通信ならびにデータ蓄積を行う上で必要不可欠な技術となっている。一般に誤り訂正符号は源データ(情報点)に対して論理的な整合性を有する冗長データ(検査点)を加えることにより、データの部分的な誤りや消失等を補間するものである。その最も重要かつ根本的な問題が効率の良い誤り訂正符号の構成とその有効な復号法の開発である。

 前者では通常、論理的な構造として代数、特に有限体理論を応用し、最小の冗長度で最大の誤り訂正能力を有する符号、すなわち最良符号の構成を目的としている。具体的にはkビットの情報点に対してmビットの検査点を加えたn=m+kビットの符号で任意のtビットの誤りを検出訂正できるとき、nとkを固定して、最大のtを有する符号を構成する問題が代表的である。

 笠原正雄氏、平澤茂一氏は、現在のように誤り訂正符号の重要性が認知される以前の1970年代初頭より最良符号の構成問題に取り組み、数多くの最良符号を導出した。特にそれまで最良符号と考えられていたBCH符号やGoppa符号の新たな数学的構造を深い洞察力によって見い出し、それを利用することにより更に能力の高い符号を多数導出している。両氏が導出した、いくつかの最良符号はほぼ20年以上経過した現在でも、その能力以上の最良符号は知られておらず、また開発した構成法のアイデアは画期的であり内外の研究者に大きな影響を与えてきている。更に連接符号や積符号に着目し、その構造を利用して最良符号を導出すると共に不均一誤り訂正という新しい概念のもとでの効率の良い符号の構成法を与えた。また符号長nを増大させた場合の漸近的な能力の解明を行い、漸近的に最良となる連接符号の構成法を開発した。

 一方、現在、Reed-Solomon(RS)符号はCD、DAT、MDあるいは光ディスクといったディジタル記録形に多用され、また衛星通信等に応用されようとしている。しかしながらRS符号は代数的に構成され、一般にその復号は容易ではなかった。両氏はRS符号を含む幅広い符号のクラスに対して適用可能な復号法を開発した。その復号法は、基本的な数論算法としてよく知られているユークリッド互除法に基づくことからユークリッド復号法とよばれている。ユークリッド復号法発見以前は比較的複雑かつ難解な復号法のみが知られていた。両氏によって開発されたユークリッド復号法は簡明かつ高速処理が可能であることから理論的、実用的な意義が大きく、研究者および技術者から絶賛されてきている。事実、国内外で設計されている一般的なRS符号のVLSI復号器の多くはユークリッド復号法を採用している。

 以上のように、両氏は、誤り訂正符号の最も重要な問題である符号化復号法の理論研究に早くから取り組み、最良符号を数多く導出し、積符号、連接符号の能力を改良すると共に、実用的なユークリッド復号法を与えることにより、従来難解であった誤り訂正符号の復号を単純明快で強力なものとした。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1994年、笠原正雄氏、平澤茂一氏に業績賞を贈った。


文献

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[2] 笠原正雄、笠原芳郎、二重のバースト誤りを訂正する擬巡回符号、1967年、電気通信学会雑誌 50巻7号 pp.1204-1211
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[16] 笠原正雄、符号化変調方式〔II〕-ディジタル変調方式と誤り訂正符号の統合-、1989年、電子情報通信学会誌 72巻 2号 pp.217-226
[17] 笠原正雄、符号化変調方式〔III・完〕-符号化変調方式とその将来-、1989年、電子情報通信学会誌 72巻 3号 pp.306-316
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[23] Shigeichi Hirasawa, Masao Kasahara, Yasuo Sugiyama, and Toshihiko Namekawa、An Improvement of Error Exponets at Low Rates for the Generalized Version of Concatenated Codes、1981年、IEEE Trans. Inform. Theory Vol. IT-27 No. 3, pp.350~352
[24] Shigeichi Hirasawa, and Masao Kasahara、Coding and Decoding Schemes with Unequal Symbol Reliability、1990年、IEICE, Fundamentals, Vol. E73 No. 7, pp.1176~1180
[25] Toshimitsu Kaneko, Toshihisa Nishijima, Hiroshige Inazumi, and Shigeichi Hirasawa、An Efficient Maximum-Likelihood-Decoding Algorithm for Linear Block Codes with Algebraic Decoder、1994年、IEEE Trans. Inform. Theory Vol. 40 No. 2, pp.320~327
[26] Toshimitsu Kaneko, Toshihisa Nishijima, and Shigeichi Hirasawa、An Improvement of Soft-Decision Maximum-Likelihood Decoding Algorithm Using Hard-Decision Bounded-Distance Decoding、1997年、IEEE Trans. Inform. Theory Vol. 43 No. 4, pp.1314~1319

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CD、DVD再生機において国内、国外においてユークリッド復号器は最も盛んに利用されている。

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1994
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キーワード

誤り訂正符号、ユークリッド復号法、重畳符号化法、積符号、誤り指数、連接符号、不均一誤り訂正符号、その他(通信一般)、データ工学、情報理論、光記録、磁気記録
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