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適応変調方式を用いたインテリジェントな無線伝送制御技術の先駆的研究

インテリジェント無線伝送制御技術の概念とそれを支える技術

図1 インテリジェント無線伝送制御技術の概念とそれを支える技術

適応変調方式の概念

図2 適応変調方式の概念

 近年、携帯電話をはじめとする移動通信の発展は目覚ましいものがあり、単なる通信手段としてのみならず、IT革命の重要な手段の一つとして経済的、社会的、文化的な構造変革の役割を担っている。しかし、移動通信の普及のためには、有限な電波資源を有効に利用し、ふくそうを回避することが必須の課題であり、利用効率を向上するための種々の技術が開発されてきている。特に移動通信の分野では、マルチパスフェージングに起因する信号伝送特性の劣化が大きく、これによる周波数利用効率の低下が発生し、これを克服するため、ダイバーシチ技術、適応等化技術、誤り訂正技術、干渉補償技術等の各種技術が研究開発されてきた。しかし、変調方式に関しては標準化された唯一の形式を固定して利用する方法が主として用いられてきている。

 森永規彦氏、三瓶政一氏は、ワイヤレス通信システムにおいてフェージングの状況に応じて変調方式を可変にする適応変調方式を考案し、その有効性を理論並びに実験的に明らかにするとともに、適応変調方式を核とした無線通信システム全体の制御をインテリジェント無線伝送制御技術として一つの学術分野に体系化した。

 従来、変調方式は厳しいフェージング状況下においても一定の品質を満足するように設計されており、更に、各種のフェージング対策技術を適用し、伝送品質の改善を行っている。しかし、伝搬路のフェージング状況は時々刻々変化しており、全時間においては必ずしも最悪の厳しいフェージング状況下にあるわけではなく、そのような状況下では、変調方式には余裕が生じている。特に、移動通信においては基地局との距離の変化並びに、周囲の建物から生じるマルチパスの状況等がユーザの移動とともに大きく変化し、必ずしも最悪の状況のみを考慮した通信を行う必要はなく、最悪時を除けば、十分な余裕が生じている場合が多い。

 両氏の考案した適応変調方式は、このような伝搬状態に余裕のある場合にのみ、高度な変調方式に適応的に変化させ同一の周波数帯域で更に大容量のデータ通信を行うことを可能にし、伝送品質を低下させることなく周波数利用効率を向上している。変調方式としても、QAM変調をはじめとし、CDMA、OFDMという各種の変調方式について具体的に変調方式を可変にした場合の効果を理論解析により明確化し、いずれについても大幅な改善効果を期待可能であることを確認している。また、変調方式の適応的選択のみではなく、実際の伝搬路状況の送信点への即応的なフィードバック制御手法、TDDによる制御のいらない手法の提案等、無線通信システム全体の制御を確立し理論的な体系化をしている。

 更に、理論的解析にとどまらず、それらの代表的なものについては、実際の装置を用いた実験を行い、その改善効果を実測し、理論計算が妥当であることを確認するとともに、装置実現に対する先駆的な寄与を行っている。

 現在、次世代の無線通信方式としてソフトウェア無線装置の検討が進められているが、フェージングに対して適応的に変調方式を可変にする概念は、この技術とも高い技術適合性を有しており、今後の無線LANやディジタル携帯電話の拡張バージョンをはじめとし、実導入に寄与するものと考えられる。

 以上に述べたように、両氏の提案した適応変調方式は、現在及び将来における移動通信技術を早い時期から洞察し、基本技術としての抜群の先進氏と画期的な有効性を有していると同時に、インテリジェント化への大きな影響を与え、世界的な潮流としての寄与を行っている。これは学術的に大きな貢献であるとともに、現在、ふくそうしている電波資源の有効利用に対し根本的な解決策を与えるものとして、社会的に極めて重要な意味を持っている。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2001年、森永規彦氏、三瓶政一氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Seiichi Sampei, Shozo Komaki, and Norihiko Morinaga、Adaptive Modulation/TDMA scheme for large capacity personal multi-media communication systems、1994年、IEICE Transactions on Communications, vol.E77-B, no.9
[2] Toyoki Ue, Seiichi Sampei, Norihiko Morinaga, and Kiyoshi Hamaguchi、Symbol Rate and Modulation Level-Controlled Adaptive Modulation/TDMA/TDD System for High-Bit-Rate Wireless Data Transmission、1998年、IEEE Transactions on Vehicular Technology, vol.47, no.4.
[3] 三瓶政一、森永規彦、高速ワイヤレスデータ伝送のための適応変調方式、2002年、電子情報通信学会誌、85巻、4号
[4] Seiichi Sampei and Norihiko Morinaga、Adaptive Modulation Techniques for High-Speed Wireless Data Transmission、2002年、Journal of the IEICE, vol.85, no.4.

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