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国際テレビジョン中継用ディジタル圧縮符号化技術の開発と実用化

 BSディジタルテレビジョン放送の開始を間近に控え、国際間のテレビジョン中継、特にHDTV中継の需要が急拡大し、ひっ迫する国際中継回線の効率的利用が急務の状況にある。このため、国際番組中継用の高品質・高効率なディジタル圧縮符号化技術の実用化が世界中から望まれている。

 村上仁己氏、松本修一氏はこのような現状を既に1980年代から問題意識として持ち、研究開発を開始した。すなわち、国際テレビジョン中継用の高品質ディジタル符号化圧縮技術を独自に考案し、実用システムを開発することにより、その実現が困難であったアナログテレビ1回線での多チャネルディジタルテレビジョン中継と国際間光海底ケーブルでの高品質HDTVディジタル中継を世界に先駆けて実用化させたものである。

 1980年代の国際テレビジョン中継は主にインテルサット衛星の一つの中継器に2チャネルのテレビ信号を伝送するハーフトランスポンダFM伝送方式により行われてきた。この帯域使用効率と同等となるディジタル中継の伝送レートは、代表的ディジタル変調方式である4相位相変調方式を用いると約30Mbit/sとなる。一方、国際間のテレビジョン中継用の標準ディジタルレートとしては、CCITT(現ITU-T)第3ディジタル階層の45Mbit/s(日・米)、34Mbit/s(欧州)が基本となっている。このようなディジタルレートの伝送路に対して、テレビジョン自身の持つ原ディジタルビットレートは現行テレビジョンで170Mbit/s、HDTVで1Gbit/sにも及ぶため、ディジタル中継には圧縮符号化技術が不可欠となる。また、特に国際中継ではオリンピックなど番組コンテンツの重要性により圧縮符号化による画質劣化が通常許されない高画質中継が至上命題となる。しかしながら、当時、この至上命題を満たしつつ、現行のアナログ伝送に比べて格段に帯域使用効率の高いディジタル圧縮符号化技術は存在せず、また国際間のHDTV中継の実現も困難であった。

 両氏は、このような背景のもと、高画質を維持しつつ高圧縮が可能なディジタル圧縮符号化技術の開発を行った。まず、テレビジョン用の圧縮符号化方式として、最近一般化しつつあるMPEG符号化などの輝度・色分離処理の必要なコンポーネント符号化ではなく、放送局で広く使われているD-2、D-3のVTRと整合性がとれ、NTSCという放送方式に準拠した、複合カラーテレビジョン信号を直接符号化するコンポジット符号化を採用し、MPEGに比べて圧縮効率の格段に高い動き補償アダマール変換と呼ばれる新しい圧縮符号化方式を考案し、初期の目的を達成した。この方式に基づき、通常のテレビジョン1回線に相当する45Mbit/sで最大12チャネルの同時伝送を可能とさせる多重通信符号化システム"MUCCSシリーズ"を開発した。一方HDTV用としては、画面間の符号化と画面内の符号化を周波数空間上で効果的に組み合わせるミックスモード符号化と呼ばれる新しい圧縮符号化技術を考案し、45Mbit/sで高品質のHDTV中継を可能とさせる符号化システム"HDC-45"を開発した。

 これらMUCCSシリーズとHDC-45の開発システムは、国際中継はもとより国内中継にも実用化され、特に、1996年のアトランタ五輪での日本向け多チャネル中継とHDTV中継を世界で初めてオールディジタルで実現するとともに、1998年長野五輪では全ヨーロッパを含む世界中継を本システムにより実現し、その有効性を商用レベルで実証した。

 以上のように、国際テレビジョンディジタル中継用に、圧縮効率と画質を追求した独自ディジタル圧縮符号化技術の開発・実用化は、現在では日常的ともなった国際間多チャネルテレビジョン中継やHDTV中継を高品質・低コストで実現させた意味で非常に高く評価されている。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、2000年、村上仁己氏、松本修一氏に業績賞を贈った。

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ディジタル圧縮符号化技術、国際テレビジョン中継、画像工学
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