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インマルサットディジタル移動衛星通信システムの開発・実用化

ディジタル移動衛星通信システム

図1 ディジタル移動衛星通信システム

パンクチャド符号を適用した誤り訂正方式の基本構成

図2 パンクチャド符号を適用した誤り訂正方式の基本構成

誤り訂正符号を適用することによる帯域拡大率と符号化利得の関係

図3 誤り訂正符号を適用することによる帯域拡大率と符号化利得の関係

 インマルサット(国際海事衛星機構)は、狭帯域FM方式によるアナログシステムを用い、1982年に国際的な海事衛星通信サービスを開始した。インマルサットシステムでは、グローバルカバレッジが求められるため、使用できるチャネル当りの電力や周波数帯域の制約が厳しい。そこで、需要増大に経済的に対応するためには、雑音に強くかつ周波数利用効率の高い通信システムの開発が必要であった。

 平田康夫氏、安田豊氏、冲中秀夫氏は、高能率な音声符号化技術・ビタビ復号による誤り訂正技術・ディジタル変復調技術等を駆使して、世界に先駆けて海事衛星通信用ディジタル伝送システムの設計指針と方式案を示すとともに、二度にわたる実証システム開発と海洋フィールド実験を実施することにより、種々のディジタル方式インマルサット標準システムの実用化を牽引した。

 KDD研究所は、1982年にインマルサットから、海事衛星通信用ディジタル伝送システムの研究開発契約を受託した。KDD研究所では、三氏らが中心となって、音声符号化方式、誤り訂正方式、ディジタル変復調方式等の要素技術の海事衛星通信環境下における特性の比較検討とシステム化技術の検討を行い、更にこれら技術を適用した海事衛星通信用ディジタルシステムの設計例を提示した。その後、三氏らは、KDD研究所独自の実証システムの開発とフィールド実験を推進し、設計システムの実用性を実証した。

 その成果は、インマルサットBシステム(通信料金の低廉化を主眼としたサービス)及びインマルサットMシステム(船舶アンテナの小型化を主眼としたサービス)の実用化に結実した。また、同じコンセプトに基づく航空衛星通信システムの開発・実用化も並行して完了した。更に、同じ通信方式を用いて陸上移動向けの可搬型地球局システム(B、M、ミニM)も開発され、世界中で広く商用されるに至った。これらのインマルサットシステムの導入時期と1998年9月末時点での全世界での利用台数は、インマルサットB(1994年導入:海事用約5,000、陸上用約3,000)、インマルサットM(1994年導入:海事用約3,000、陸上用約12,000)、インマルサットミニM(1996年導入:海事用約3,000、陸上用約30,000)、航空衛星通信(1993年導入:約3,000)となっている。なお、アナログ方式のインマルサットAは約24,000台が稼動している。

 平田康夫氏は、一連の開発・実用化を推進することと並行して、1985年以降1997年までITU-Rの移動衛星関連作業班であるWP8Dの議長(及びSC8の副議長)等を務め、国際的な標準化活動を通じてインマルサット以外の世界各国・地域の衛星通信システムの開発・実用化にも多大な貢献を行った。また、安田豊氏、冲中秀夫氏の両氏は、技術研究開発の実施にとどまらず、1984~1988年にかけて英国のインマルサット事務局に相次いで出向し、事務局内でのインマルサットB/Mや航空衛星通信システムの詳細仕様策定作業に直接従事し、実用化を推進した。

 以上のように、アナログ方式全盛の時期に海事衛星通信用ディジタル方式の設計指針と実用性を示し、更に詳細仕様策定作業をも直接推進することで国際的移動衛星通信システムを商用化した先導性は高く評価されるものである。

 この技術に対して、電子情報通信学会は、1999年、平田康夫氏、安田豊氏、冲中秀夫氏に業績賞を贈った。


文献

[1] Y. Hirata, Y. Yasuda and H. Okinaka、Design of Digital Standard System for the Future INMARSAT System、1983年、Third International Conference on Satellite Systems for Mobile Communications and Navigation
[2] Y. Yasuda, K. Kashiki and Y. Hirata、High Rate Punctured Convolutional Codes for Soft Decision Viterbi Decoding、1984年、IEEE Transaction on Communication, Vol.COM-32, No.3
[3] Y. Hirata, Y. Yasuda and K. Kashiki、A Digital Transmission System for Global Maritime Satellite Communications、1984年、Proceeding of the IEEE, Vol.72, No.11
[4] Y. Yasuda, Y. Hirata, K. Nakamura and S. Ohtani、Development of variable-rate Viterbi decoder and its performance characteristics、1983年、Sixth International Conference on Digital Satellite Communications, Phenix, Arizona, USA

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