1. HOME
  2. 電気・情報関連(入門)
  3. 研究情報(登録番号317)

高電子移動度トランジスタ(HEMT)の研究開発

高電子移動度トランジスタ(HEMT)の断面図

図1 高電子移動度トランジスタ(HEMT)の断面図

 1970年代の後半は世界中で、電子計算機や通信機器の高速化、高性能化をめざしてシリコン(Si)デバイスの微細加工の技術改良が進められていました。また一方で、シリコンデバイスの限界を超えてすばやく働く素子として、電子移動の速い化合物半導体を利用しようという開発競争も盛んだったのです。その化合物として特に注目されたのが〈ガリウム・ヒ素〉(GaAs)でした。

 こうした開発競争さなかの1979年、〈ガリウム・ヒ素〉化合物の電子移動速度を極限まで高めた超高速素子が登場しました。富士通研究所で発明された「高電子移動度トランジスタ」(HEMT)です。

 〈ガリウム・ヒ素〉化合物と〈アルミニウム・ガリウム・ヒ素〉化合物という2種類の材料(結晶)を重ね合わせると、「結晶の接合面に非常に薄い電子層ができる」という外国の論文を見たのがきっかけでした。重ね合わせ方法を工夫して実際に作ってみると、確かに接合面に平行な薄い電子層ができ、しかも蓄積することが分かりました(図)。

 電子層を詳しく調べたところ、電子は〈アルミニウム・ガリウム・ヒ素〉化合物の側から〈ガリウム・ヒ素〉化合物の中に供給されていたのです。そして電子蓄積層の厚みは10万分の1㎜以下で、その層の中を電子が高速に移動することが確かめられました。

 次の挑戦は、この電子層を活用した新しい超高速トランジスタの試作です。図のように〈アルミニウム・ガリウム・ヒ素〉化合物の表面に3種類の電極を乗せてみたら、「電界効果トランジスタ」と呼ばれるトランジスタが出来上がったのです。液体窒素の温度(マイナス196°C)で電子の移動速度が最高になることが明らかにされ、電子計算機や通信機器を高速化する素子として役立つことが実証されました。

 以上のような研究開発を続けて高電子移動度トランジスタを完成させた富士通研究所の三村高志さんと冷水佐壽さんに対して1983年、「電子通信学会業績賞」が贈られました。

 その後1985年には、高電子移動度トランジスタは世界一雑音の小さいマイクロ波半導体デバイス製品として富士通(株)で製品化され、野辺山天文台の電波望遠鏡に採用されました。さらに衛星放送アンテナの小型化にも役立ち、1987年から世界各国の衛星放送受信機に搭載され、一般家庭にも普及しています。



さらに詳しく知りたい読者は「専門向け」のページもご覧ください。


関連する研究を検索

分野のカテゴリ

電子・デバイス
(電子部品)

関連する出来事

1979年
HEMTの発明
1985年
HEMT製品化

世の中の出来事

データなし

Webページ

博物館等収蔵品

データなし

キーワード

電子デバイス、無線通信システム、光通信システム、マイクロ波、集積回路
Page Top