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微細超深穴加工用ドリルの開発

開発したドリルの形状

図1 開発したドリルの形状

開発した切り屑ストッパー

図2 開発した切り屑ストッパー

本開発品の加工メカニズム

図3 本開発品の加工メカニズム

切削事例 L/D=100の微細超深穴加工

図4 切削事例 L/D=100の微細超深穴加工

1.概要

 微細超深穴加工用ドリルの「エポックマイクロステップボーラー」は,従来の加工法では実現できなかったL/D=100といった高アスペクト比の微細穴あけ加工を可能にする切削工具である.

 近年,金型や部品の小型化に伴って微細穴あけ加工に対する要望が高まり,各社から微細穴あけ用ドリルが開発されてきている.しかしこれらの工具を用いた場合に可能な穴深さはL/D=20程度までであり,更なる深穴加工は放電加工に頼らざるを得ない.しかしながら放電加工にも深さ方向への限界や,電極の寿命,加工時間などに関して課題を抱えている.これらの課題を解決するために,新概念の「切り屑ストッパー」を開発し,かつ高い剛性の首部形状を採用したことで,従来では実現できなかった微細超深穴加工を可能にした.

2.技術の内容

 穴の直径が1mm以下の加工の場合,工具の剛性や切り屑排出の課題から,一般的にステップ加工を行う必要がある.今回開発した工具はステップ加工を行うことを前提として,深穴加工の要求仕様を満たす形状を開発し採用した.

 工具剛性を向上させるためには工具の断面積を大きくする必要があるが,心厚(ウェブ厚)が大きすぎると切り屑ポケットが十分に確保できなくなる.また穴の深さが深くなれば,一般的に切り屑排出溝も長くなるため,工具剛性の面でより大きな問題が発生してしまう.しかしステップ加工を行うことを前提にすれば,それほど切り屑排出溝を長くする必要性はないと考えられる.

 一般的なサイズのドリルであっても深穴になるとステップ加工を行い,ドリルを穴付近まで戻す深穴サイクルを使用することが多いが,本開発品においてはそれが前提の加工方法になる.すなわち,穴が深くなれば切り屑排出溝を長くしないといけないという従来の考え方から逆転の発想で設計した.つまり図1に示すようにドリルの形状として,必要最低限の切り屑排出溝を確保し,その後端には刃径よりも少し小さい首ストレート部を設けた.これにより工具剛性が大幅に上がり,曲げに対しても強くなる.

 しかし,後端の首ストレート部分には切り屑ポケットがないため,切削中,その部分に切り屑が流れると切り屑が噛み込んで折損が生じてしまい,その後加工することができなくなる.そこで,本開発品には図2に示すように,切り屑排出溝と首ストレート部の間に切り屑ストッパーを設けた.本来ドリルの設計上,切り屑は溝に沿って上面へいかにスムーズに持ち上げるかという発想になる.つまりここでも従来の常識とは逆の発想で,切り屑を上面に上がらないように壁を設けている.

 図3に,その加工メカニズムを示す.加工方法としては一回のステップ量を加工するごとに,ドリルを穴付近まで戻して,再度穴深さ方向へ移動させる方法である.この切り屑ストッパーの効果で,加工後に発生した切り屑を確実に切り屑排出溝のみに溜めて,ドリルを穴付近まで戻した際に,確実に切り屑を外部へ排出できる.同図からもわかるように,切り屑ストッパーによって加工中のガイド性も向上し,真直度の高い穴精度が得られる.

 図4に本開発品(工具径φ0.5mm,首下長さ50mm)の切削事例を示す.被削材はSUS304で,穴径φ0.5mm,穴深さ50mm,すなわちL/D=100倍という従来の常識では考えられなかった超深穴加工を行った.同図からもわかるように,穴内面の仕上げ面粗さも良好であり,従来放電加工でも困難であった領域まで高精度な穴あけを実現した.

3.まとめ

 今回開発した微細超深穴加工用ドリルは「エポックマイクロステップボーラーS」の商品名にて販売している(2010年6月より標準化).本工具は,現在,最新の医療部品や各種ノズル,金型などの製造において御使用頂いており,様々な分野において最先端の加工に役立てて頂いている.

 本研究の成果に対して、日本機械学会は、2011年、赤松猛史(日立ツール(株))、吉村彰(同左)、木野晴喜(同左)に日本機械学会賞(技術)を贈った。

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キーワード

高アスペクト比、微細穴あけ加工、深穴加工、切り屑ストッパー、切り屑排出、ステップ加工
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